建設業の人手不足はなぜ深刻?原因と現状・解決策を徹底解説
この記事のポイント
建設業の人手不足は就業者数の減少と高齢化が重なる構造的問題で、2025年平均の就業者は478万人、55歳以上が36.6パーセントを占める。処遇改善・外国人材・建設DXによる省人化を自社の規模に合わせて組み合わせる対策が有効。
「建設業の人手不足はなぜここまで深刻なのか、原因と現状を正しく把握したい。そのうえで、採用を増やすだけでなく限られた人員でも事業を続けられる対策を、自社の規模に合った優先順位で選びたい」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 建設業の人手不足の現状をデータで把握
- 人手不足が起きる原因と影響
- 省人化と処遇改善による解決策
建設業の人手不足は、就業者の高齢化と若手の入職減という構造的な原因が重なって生じており、処遇改善と建設DXによる省人化を組み合わせることで乗り越えられます。
採用一辺倒では限界がある今、自社の規模や業態に合った打ち手を選べば、限られた人員でも事業を継続できます。同業他社に出遅れないためにも、ぜひ最後までご覧ください。
建設業の人手不足の現状をデータで把握する
建設業の人手不足は、就業者数の長期的な減少、進む高齢化、需給の逼迫を示す指標がいずれも同じ方向を指しており、公的データで深刻さがはっきり示されています。国土交通省や日本銀行が公表する数値を順に押さえると、自社が直面する状況を業界全体のなかで客観的に位置づけられます。
建設業就業者数の推移
建設業の就業者数は、1997年平均の685万人を頂点に減少が続き、ピーク時から大きく減っています。総務省の労働力調査をもとにした国土交通省の集計では、2025年平均は478万人で、ピークから約30%減の水準です。
主な節目は次のとおりです。
| 年(暦年平均) | 建設業就業者数 | うち技能者 |
|---|---|---|
| 1997年 | 685万人(過去最多) | 455万人 |
| 2010年 | 504万人 | 331万人 |
| 2022年 | 479万人 | 302万人 |
| 2023年 | 483万人 | 304万人 |
| 2024年 | 477万人 | 300万人 |
| 2025年 | 478万人 | 296万人 |
2025年は就業者数が前年から1万人増えた一方で、現場の作業を担う技能者は296万人と前年より4万人減りました。技術者は41万人で、1997年と同じ水準まで戻っています。全体の人数が横ばいでも、技能者の減少は止まっていない点に注意が必要です。数値は国土交通省の参考資料集(令和8年4月3日)によります。
短期間で増員が難しい背景には、新規入職者が退職者を補えていない構造があります。建設業の人手不足は一時的な景気要因ではなく、四半世紀をかけて進んだ長期トレンドとして理解する必要があります。
就業者の高齢化と若手不足の実態
建設業では退職期に近い高い年齢層が多く入職する若い世代が少ないため、高齢化と若手不足が同時に進み年齢構成のゆがみが鮮明です。2025年平均で、建設業就業者のうち55歳以上が36.6%を占める一方、29歳以下は11.9%にとどまっています。
全産業と比べると、この偏りがより際立ちます。
| 区分(2025年平均) | 55歳以上の割合 | 29歳以下の割合 |
|---|---|---|
| 建設業 | 36.6% | 11.9% |
| 全産業 | 32.8% | 17.0% |
技能者に限ると、60歳以上が全体の約4分の1(25.3%)を占めます。国土交通省は、10年後にはその大半が引退すると見込んでいます。
高齢層の割合が全産業より高く若手の割合は逆に低い状態で、このまま推移すれば今後10年で大量の退職が見込まれ技能や知識の継承も難しくなります。建設業の人手不足は、頭数だけでなく世代交代の遅れという質的な課題も抱えています。
若手不足は個社の採用問題にとどまらず、建設業界の課題として工程・品質・安全管理にも影響します。
受注はあるのに着工できない現場の声
需要は底堅い一方でそれを担う人員が決定的に不足しているため、仕事はあるのに人を確保できず着工や工期に支障が出る現場が増えています。Forbes JAPANが報じた調査では、建設業界の約8割が人手不足を理由に受注を見送った経験があると回答しました。
現場で起きている主な事象は次のとおりです。
- 人員を組めず、受注そのものを断念する
- 工程を消化しきれず、工期の延長を余儀なくされる
- 一人当たりの業務負荷が増し、長時間労働が常態化する
担い手不足を経営課題と捉える声も多く、調査によっては建設会社の8割超が担い手確保に課題があると答えています。受注機会を逃す状況は売上に直結するため、建設業の人手不足は収益面でも見過ごせない問題です。
雇用人員判断D.I.が示す需給の逼迫
労働の需給の逼迫度は、日本銀行の雇用人員判断D.I.で定点的に確認できます。この指標は「人員が過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を差し引いた値で、2026年9月調査の日銀短観では全産業・全規模がマイナス38(6月調査はマイナス37)、中小企業はマイナス42となり、バブル期並みの深刻な不足超が続いています。12月までの先行きも全規模でマイナス41と、不足感がさらに強まる見通しです。
建設業はこの全産業の傾向のなかでも特に不足感が強い業種の一つで、受注はあるのに着工できないという現場の実感はこの指標の動きと整合しています。建設業界の人手不足を示すデータとして、就業者数や年齢構成と並び需給バランスを映す重要な手がかりになります。
建設業が人手不足になるのはなぜか
建設業の人手不足は、一時的な景気変動ではなく構造的な要因から生まれています。就業者の高齢化、若手の入職減、賃金や労働条件への根強いイメージ、技術継承の難しさが連鎖し、人が抜けても補充できない状態が続いているためです。
ここでは、なぜ建設業で人手不足がここまで深刻になったのか、原因を一つずつ整理します。
職人の高齢化と団塊世代の引退
最大の原因は、就業者の高齢化と引退の波です。年齢構成の偏りは前章のデータで触れたとおりで、55歳以上が高い割合を占める一方、29歳以下は1割程度にとどまります。
技能労働者の減少も深刻で、平成9年に約455万人だった技能者数は令和7年に約296万人へと、およそ35%減りました。引退する人数を新規入職者が補えていないため、現場の担い手が年々細っています。
さらに2025年問題として、団塊世代が全員75歳以上の後期高齢者となる局面を迎えました。長年現場を支えてきたベテランが一斉に退く流れは、今後も建設業の人手不足を加速させる見通しです。
若い世代の入職者が増えない理由
若手の入職が増えない背景には、定着のしにくさがあります。厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」によると、令和4年3月に高校を卒業して就職した人の3年以内離職率は、全産業の37.9%に対して建設業は41.4%と高く、せっかく入っても早期に離れる人が少なくありません。前年の卒業者(建設業43.2%)よりは下がりましたが、全産業との差は残っています。
離職理由は単純なきつさだけではなく、待遇や働き方への不安が中心です。企業側が「仕事がきついから辞めて当然」と捉える一方、離職した若手は次のような点を挙げています。
- 日給月給制など雇用が不安定に感じられること
- 遠方現場が多く、移動の負担が大きいこと
- 休みの希望が通りにくいこと
近年はワークライフバランスを重視する若者が増えており、休日や働き方が整わない職場は選ばれにくくなっています。入口で敬遠され、入っても定着しないという二重の壁が、若手不足を長引かせています。
低賃金と労働条件への根強いイメージ
賃金と労働条件のイメージも、人が集まりにくい一因です。建設業の年間総労働時間は全産業より長い傾向が続き、厚生労働省の統計でも全産業を上回る水準が示されています。
こうした長時間労働の印象が、建設はきついというイメージを補強してきました。
実際には改善も進んでいます。2024年4月から時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、週休二日制の導入や残業削減とあわせて賃金水準の改善も業界全体で進んでいます。
| 項目 | これまでのイメージ | 現在の動き |
|---|---|---|
| 労働時間 | 長時間で休みが少ない | 上限規制と週休二日を推進 |
| 休日 | 日曜のみで不安定 | 週休二日制の導入が拡大 |
| 賃金 | 低く伸びない | 処遇改善で上昇傾向 |
問題は、こうした変化が求職者にまだ十分伝わっていない点です。古いイメージが先行し、改善の実態が知られないまま敬遠されることが、建設業の人手不足を解消しにくくしています。
技術継承が難しくなる構造的な要因
技術継承の難しさも、人手不足を深める構造的な要因です。建設の技能には勘やコツといった言葉にしにくい暗黙知が多く、マニュアル化だけでは伝わりません。
こうした技能は、長年にわたり現場でのOJTを通じて受け継がれてきました。
ところが、その継承の前提が崩れつつあります。熟練者の多くが60代に差しかかり、現場は人手不足で工程もタイトなため、若手に教える時間を確保しにくいのが実情です。
教えたくても教えられないという状況が、各地の現場で起きています。
技能の習得には長い年月がかかります。育成が追いつかないうちにベテランが引退すれば、技術は属人化したまま失われます。
人が減るほど継承が難しくなり、継承が滞るほど一人前が育ちません。この悪循環が、建設業の人手不足を長期化させています。
建設業の人手不足がもたらす影響とリスク
建設業の人手不足は、採用が難しいという問題にとどまりません。工程の遅延や現場の負荷増、倒産、受注機会の喪失まで、経営全体に連鎖的なリスクをもたらします。
人材の不足が、工期や利益、信用に直接結びつくためです。実際に大手から中堅の建設会社の約7割が、2026年度内は大型工事を新規受注できないと見ています。
人を確保できない状態を放置すれば、事業の継続そのものが揺らぐ深刻なリスクになります。
工事の停滞と工程の遅延
人手不足が深刻になると、受注した工事に着手できず、工程の遅延が常態化します。職人の数が足りなければ、計画した工期どおりに作業を進められないからです。
契約済みの工事でも、4割弱の企業が工期遅延の可能性を認めています。職人不足に資材調達の遅れが重なると、工期延長によるコストが追加で発生します。
受注はあっても着工できない状態が、現場の停滞を生んでいます。
一人当たりの業務負荷の増加
人員が減ると、残った担当者一人当たりの業務負荷が増え、長時間労働につながります。少ない人数で同じ量の工事をこなす必要があるためです。
国土交通省が厚生労働省の毎月勤労統計調査(年度報、パートタイムを除く一般労働者)をもとにまとめた資料では、建設業の年間総実労働時間は全産業より48時間長く、年間出勤日数は10日多い状態です。2024年4月からは時間外労働の上限規制が適用され、原則として月45時間、年360時間が上限になりました。
負荷の増加は離職を招き、人手不足がさらに進む悪循環を生みます。
人手不足倒産の増加傾向
人手不足は、企業の倒産という最も重いリスクに直結しています。人材を確保できず、事業を維持できなくなる会社が増えているためです。
帝国データバンクの調査によると、2025年度の人手不足倒産は441件と、年度ベースで初めて400件を超えました。3年連続で過去最多を更新しています。
なかでも建設業は112件にのぼり、全体の25.4%を占めました。建設業の人手不足倒産は、業種別で最も多い水準にあります。
受注見送りによる機会損失
人手が足りないと、需要があっても受注を見送らざるを得ず、機会損失が発生します。施工できる人員がいなければ、引き合いがあっても仕事を受けられないからです。
前述のとおり、建設業界の約8割が人手不足を理由に受注を見送った経験があると回答しています。調査によっては、その割合が9割を超えたという結果もあります。
下表は、建設業の人手不足が招く主なリスクを整理したものです。
| リスクの種類 | 具体的な影響 |
|---|---|
| 工程の遅延 | 着工の遅れ、工期延長によるコスト増 |
| 業務負荷の増加 | 長時間労働の常態化、離職の加速 |
| 人手不足倒産 | 事業継続の困難、信用の低下 |
| 機会損失 | 受注の見送り、売上拡大の停滞 |
主なリスクは、以下の点に整理できます。
- 工程の遅延が工期延長とコスト増を招く
- 一人当たりの負荷増が離職を加速させる
- 人手不足倒産が過去最多の水準で増えている
- 受注見送りが売上拡大の機会を奪う
これら複数のリスクが連鎖して経営を圧迫します。早期に対策へ着手するほど、被害を抑えやすくなります。
建設業の人手不足を解決する対策
建設業の人手不足は、一つの打ち手だけで解消できる問題ではありません。処遇改善や採用見直し、外国人材の活用、建設DXによる省人化を組み合わせ、自社の規模や業態に合った優先順位で進めることが解決への近道です。
ここでは効果が見込める4つの対策を、最新の制度や数値とあわせて整理します。
賃金と労働環境の処遇改善
人手不足の解決策として、まず取り組みたいのが賃金と労働環境の処遇改善です。給与水準や休日が他産業に見劣りすれば、若手は集まらず定着もしません。
国も処遇改善を後押ししています。2024年に改正された建設業法では、技能者へ適切な労務費が行き渡るよう、労務費の基準に関する規定が新設されました。
建設キャリアアップシステム、いわゆるCCUSは技能者の経験や資格をデジタルで記録し、適正な評価につなげる仕組みで、登録技能者は2026年8月末時点で累計190万8,307人にのぼります。CCUS登録技能者の平均賃金は、全建設技能者の平均より約4パーセント高い水準です。
処遇改善に関わる主な制度と時期は次のとおりです。
| 制度 | 内容 | 時期 |
|---|---|---|
| 時間外労働の上限規制 | 原則として月45時間、年360時間 | 2024年4月から建設業に適用 |
| 労務費に関する基準 | 中央建設業審議会が作成、勧告。基準を著しく下回る見積りや契約の締結を禁止 | 2025年12月2日に作成、同月12日に改正建設業法が全面施行 |
| 公共工事設計労務単価 | 全国全職種の加重平均は25,834円。単純平均で前年度比4.5%の引き上げ、14年連続の上昇 | 2026年3月から適用 |
| 建設キャリアアップシステム | 技能者登録の累計は190万8,307人、事業者登録は31万6,371 | 2026年8月末時点 |
労務費に関する基準は、公共工事と民間工事のどちらにも、また発注者と元請、元請と下請、下請同士のすべての段階に適用されます。自社が受け取る労務費と、技能者に支払う賃金の両方を点検する材料になります。
具体的に着手しやすい施策を挙げます。
- 労務費を適正に確保し、現場作業員の賃金を底上げする
- 週休二日制を導入し、長時間労働を見直す
- 資格取得支援や手当を整え、技能に応じた評価を明確にする
処遇を整えることは、限られた人員でも事業を続けるための土台になります。
採用方法とイメージの見直し
採用方法とイメージの刷新も欠かせません。前述のとおり就業者の高齢化が進み、29歳以下は1割程度にとどまるため、母集団の拡大が急務です。
若手が集まらない背景には、危険できついという古い業界イメージがあります。働き方改革で労働環境は改善に向かっており、この変化を採用の場で正しく伝えることが、応募者の不安を減らします。
定着率を高めるには、入社後に長く働ける環境を示すことが重要です。
- キャリアパスと昇進要件を明確にし、将来像を見える化する
- 子育てや介護と両立できる制度を整える
- 女性技術者の活躍事例を発信し、多様な人材に門戸を開く
採用とイメージの見直しは、母集団を広げるだけでなく、入社後の早期離職を防ぐ効果も期待できます。
外国人材の受け入れ体制の整備
外国人材の受け入れも、人手不足を補う現実的な選択肢です。国土交通省の資料によると、建設分野で働く外国人技能者は約17万人で、全建設技能者の約6%を占めます。在留資格別では技能実習が最も多く、2025年は約12万人でした。
政府は2024年3月に、特定技能外国人の受入れ見込数を5年間で82万人(建設分野は8万人)と設定しました。その後、育成就労制度の創設に合わせて見直され、2029年3月末までの受入れ見込数は次のとおりです。受入れ見込数は受入れの上限として運用されます。
| 区分 | 全分野の合計 | うち建設分野 |
|---|---|---|
| 特定技能 | 80万5,700人 | 76,000人 |
| 育成就労(2027年4月の制度開始から) | 42万6,200人 | 123,500人 |
制度面では大きな転換が控えています。技能実習に代わる育成就労制度が2027年4月に始まります。両制度の違いを整理します。
| 項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 国際貢献 | 人材育成と人手不足分野の人材確保 |
| 転職 | 原則不可 | 一定の条件下で可能 |
| 想定する到達点 | 技能の習得 | 3年で特定技能1号レベルへ |
育成就労制度では、3年の就労を通じて特定技能1号の水準を目指し、在留資格の移行を円滑につなげる設計です。受け入れにあたっては、在留資格の手続きだけでなく、住居や生活支援、日本語教育などの体制づくりも必要になります。
安定した戦力にするには、長く働いてもらう環境を整えることが前提です。
建設DXによる省人化と生産性向上
建設DXによる省人化は、採用に頼らず生産性を高める対策です。人を増やせない局面でも、限られた人員で工事量を維持する手段になります。
国土交通省は2024年に「i-Construction 2.0」を策定し、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍に高める目標を掲げました。施工のオートメーション化、データ連携のオートメーション化、施工管理のオートメーション化という3つの柱でデジタル化を進める方針です。
すでに成果も出ており、ドローン測量では従来手法の約4割の人工で測量が可能になりました。直轄土木工事のICT施工では、2015年度と比べて平均で約21パーセントの作業時間の短縮効果が確認されています。2025年度は、直轄工事での自動施工が9件(前年度4件)、遠隔施工が41件(前年度21件)と、どちらも前年度から倍増しました。
中堅以下の企業でも導入しやすい技術から始められます。
- ドローンによる測量で、計測の人手と時間を減らす
- ICT建機を活用し、施工の自動化と精度向上を図る
- 施工管理アプリで書類や写真整理の負担を軽くする
建設DXは初期投資や運用ノウハウが課題になりますが、省人化と生産性向上を両立できる打ち手として、人手不足対策の中核を担います。
建設テックを導入する際は、現場単位の業務削減効果まで確認することが重要です。
規模や業態に応じた人手不足対策の進め方
建設業の人手不足対策は、自社の規模と業態に合わせて優先順位を決めることが成果への近道です。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月分、パートを含む常用)では、建設・採掘従事者の有効求人数11万5,596人に対して有効求職者数は2万3,143人で、有効求人倍率は約5倍です。職業計の1.05倍と比べると、採用の難しさが際立ちます。この採用環境では、人を増やす施策だけに頼ると原資が尽きてしまいます。
中堅以下のゼネコンと専門工事業では、抱える課題も使える打ち手も異なります。短期と中長期を分けて整理し、業態の特性に合った施策を選ぶ進め方が必要です。
短期で着手できる施策の優先順位
短期では、今いる人員が辞めない環境づくりと業務効率化を優先します。採用に時間がかかる以上、既存社員の離職を止めるほうが投資対効果が高いからです。
週休2日や残業削減、給与水準の見直しといった処遇改善は、離職防止に直結します。あわせて施工管理アプリなどのITツールで事務作業を減らすと、1人が同時に管理できる現場数を増やせます。
優先度の目安は次のとおりです。
| 優先度 | 施策 | 主な効果 |
|---|---|---|
| 高 | 処遇改善(週休2日・残業削減・賃上げ) | 離職防止と採用力の底上げ |
| 高 | ITツールによる業務効率化 | 既存人員の生産性向上 |
| 中 | 採用チャネルの見直し | 母集団の確保 |
中長期で取り組む人材育成と定着
中長期では、若手が育ち定着する仕組みを整えることが軸になります。29歳以下の技能者が全体の1割程度にとどまる現状では、入職後の育成と定着を一体で進めないと現場力が落ちるためです。
国土交通省と厚生労働省も、2026年度予算で人材確保・育成・魅力ある職場づくりの3分野を重点に掲げています。企業側で効果が見込める取り組みの柱は以下のとおりです。
- 体系的な育成サイクルによる早期戦力化
- 労働条件と評価基準の明確化
- 安全衛生管理とハラスメント防止の徹底
中堅以下のゼネコンが取るべき視点
中堅以下のゼネコンは、今いる人員の生産性を高める省人化の視点を重視します。即戦力の採用が難しい以上、1人当たりの管理範囲を広げるほうが現実的です。
2024年12月以降、ICTで現場確認ができる場合、請負代金が1億円未満(建築一式は2億円未満)の工事で技術者が2現場まで兼務できるようになりました。施工管理アプリやICT施工を導入すれば、限られた技術者でより多くの現場を回せます。
建設DXによる省人化は、中堅以下のゼネコンが人手不足を乗り越えるうえで中心的な打ち手になります。まず兼務やICT施工で効果が出やすい現場から導入を進めると、投資判断もしやすくなります。
中堅以下では、全社一括ではなく現場単位でゼネコンDXを始めるほうが定着しやすくなります。
専門工事業に適した打ち手の選び方
専門工事業は、技能の幅を広げる多能工化と、適正な労務費の確保を組み合わせて選ぶことが大切です。職種ごとに人材が偏りやすく、下請構造の中で労務費が転嫁しにくいという課題があるためです。
2025年12月に全面施行された改正建設業法では、中央建設業審議会が作成した労務費に関する基準を著しく下回る見積りや契約が、公共工事と民間工事を問わず禁じられました。労務費などを内訳明示した見積りを商慣行として定着させる取り組みも、国と業界団体が進めています。
外国人材の活用では、建設分野の特定技能2号の在留者が2025年12月末時点で1,799人まで増えており、長期的な戦力確保がしやすくなっています。自社の工種に合わせて打ち手を選び、無理のない順番で進めることが、専門工事業の人手不足対策につながります。
まとめ:建設業の人手不足は原因把握と省人化で乗り越える
建設業の人手不足は、就業者数の推移や雇用人員判断D.I.が示すとおり需給が逼迫した状態にあります。本記事では、その現状をデータで確認し、職人の高齢化や若手不足といった原因、工程遅延や受注見送りといった影響、そして処遇改善や外国人材の受け入れ、建設DXによる省人化までの解決策を解説しました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 人手不足の現状はデータで把握できる
- 高齢化と若手不足が構造的な原因
- 省人化と処遇改善が有効な対策
原因と現状を正しく把握し、自社の規模や業態に合った対策を優先順位づけして進めれば、限られた人員でも工事を止めずに事業を継続し、成長へとつなげられます。採用一辺倒の限界を超える一歩として、省人化への投資を検討してみてください。
建設業の制度改正や現場DXの新着記事は、メルマガでお知らせしています。実務で使える早見表や記入例は、お役立ち資料から無料でダウンロードできます。
建設業の人手不足に関するよくある質問
参考文献
- 国土交通省 i-Construction(i-Construction 2.0)
- 日本銀行 全国企業短期経済観測調査(短観)2026年9月
- 国土交通省 不動産・建設経済局 参考資料集(令和8年4月3日)
- 厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)
- 厚生労働省 一般職業紹介状況(令和8年7月分)
- 国土交通省 i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~(令和6年4月)
- 国土交通省 「i-Construction 2.0」の2年目(2025年度)の取組成果(令和8年4月28日)
- 国土交通省 令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について
- 建設業振興基金 建設キャリアアップシステムの運営状況について(2026年8月)
- 国土交通省 不動産・建設経済局 建設業、不動産業界の最新動向、今後の展開(令和8年4月、香川県掲載)
執筆者
編集部
Construction DX 編集部は、建設DX・建設テック・業界動向に関するニュースや解説記事を制作する編集チームです。最新の技術・市場・制度・導入事例をわかりやすく整理し、建設業界のDX推進に役立つ情報を中立的な視点で発信しています。
監修者
リサーチチーム
Construction DX リサーチチームは、建設DX市場や最新技術、法制度、国内外の事例を継続的に調査・分析する専門チームです。公開情報や一次情報をもとに内容を検証し、正確性・信頼性の高いコンテンツ制作を支援しています。
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