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建設業の事業承継を成功させる|許可引継ぎ・認可手続き・税制

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この記事のポイント

建設業の事業承継では親族内・従業員・M&Aの3方法から選択し、令和2年改正の事前認可制度を活用すれば建設業許可番号・経審結果を空白期間なく引き継げる。経営業務の管理責任者・営業所技術者等の要件充足と2027年9月までの特例承継計画提出が成功の鍵となる。

建設業の事業承継を成功させる|許可引継ぎ・認可手続き・税制

「建設業許可を失わずに後継者へ引き継げるのか、誰に相談すればいいのかもわからない」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • 親族内承継・従業員承継・M&Aの3つの選択肢と判断基準
  • 令和2年改正で新設された建設業許可の認可制度と手続きの流れ
  • 事業承継税制の特例活用から相談先の選び方まで

建設業の事業承継は、許可の引き継ぎ手続きと後継者戦略を同時に進める必要があります。

後継者がいない場合でもM&Aという選択肢があり、許可番号を維持したまま承継できる制度も整っています。各ステップを順に解説します。

建設業の事業承継を進める前に知っておくべき3つの選択肢

建設業の事業承継には、大きく分けて「親族内承継」「従業員承継」「M&Aによる第三者承継」の3つがあります。2026年現在、建設業の後継者不在率は57.3%(帝国データバンク調査)と全業種平均の50.1%を上回っており、どの方法を選ぶかが会社の存続を左右します。まず3つの選択肢の全体像を把握したうえで、自社に合った方法を判断することが重要です。

親族内承継と従業員承継の違い

親族内承継は子や配偶者などの家族が後継者となる方法で、従業員承継は長年勤めた幹部や従業員が引き継ぐ方法です。建設業事業承継を進めるにあたり、両者の特徴を比較すると以下のとおりです。

比較項目親族内承継従業員承継
後継者候補子・配偶者・兄弟など幹部社員・職人リーダーなど
引き継ぎやすさ会社の理念・文化を継承しやすい現場経験・技術力が豊富で即戦力
主な課題後継者が経営に興味を持たないケースがある株式取得・経営保証引き受けの資金調達が必要
建設業許可法人の株式を引き継ぐ場合、許可は法人に残る。個人事業主の事業を引き継ぐ場合は認可申請で地位を承継同上
税務事業承継税制(特例措置)を活用できる活用できるが手続きが複雑になる場合あり

親族内承継は会社の安定継続に向いている一方、後継者本人の意欲と経営能力が前提になります。従業員承継は技術・ノウハウの引き継ぎがスムーズですが、個人保証の承継や株式取得資金の手当てを先に整理しておく必要があります。

許可の手続きは、誰が継ぐかではなく、許可を持つ主体が変わるかどうかで決まります。国土交通省の建設業許可事務ガイドラインが認可の対象としているのは、譲渡及び譲受け、合併、分割、相続の4つです。

承継の形許可を持つ主体建設業許可の手続き
法人の株式を後継者が取得し、代表者が交代する同じ法人のまま認可の対象外。代表者や役員、常勤役員等の交代を変更届で届け出る
事業譲渡(個人事業主の法人成りを含む)譲受人に変わる譲渡の前に認可を受ける(建設業法第17条の2)
合併、会社分割存続法人や承継法人に変わる合併や分割の前に認可を受ける(同上)
個人事業主の死亡による相続相続人に変わる死亡後30日以内に認可を申請する(建設業法第17条の3)

法人の代表者が親族や従業員に交代するだけであれば、後継者が常勤役員等の要件を満たしているかどうかが論点になります。届出の期限は建設業許可の変更届の記事で整理しています。

M&Aによる第三者承継が建設業で増えている背景

親族や従業員に後継者がいない場合に有力な選択肢となるのが、M&Aによる第三者承継です。上場企業が関わる建設業のM&A件数は2020年の9件から2024年には34件へと約3.8倍に増加しました。2023年単年でも公表ベースで131件が成立しており、件数は高水準で推移しています。

増加の背景には以下の要因があります。

  • 経営者の高齢化と後継者不在が同時に進行し、廃業より売却を選ぶ経営者が増加
  • 建設業許可や施工実績、職人の技術を丸ごと取得できるため買い手のニーズが高い
  • 2020年の建設業法改正で「事業承継の事前認可制度」が整備され、許可をスムーズに引き継げるようになった
  • 2024年度の後継者難倒産127件(建設業・帝国データバンク調査)など、廃業リスクの顕在化

売り手にとってはまとまった売却益を得ながら従業員の雇用を守れる点が最大のメリットです。買い手にとっては技術者・技能者を即確保でき、建設業許可も引き継げる点が魅力となっています。

後継者がいない場合に取れる現実的な手段

後継者不在は、建設業の人手不足と同じく事業継続を左右する構造問題です。

「身内にも社内にも後継者がいない」という場合でも、すぐに廃業を決断する必要はありません。取れる選択肢を優先度の高い順に整理すると次のとおりです。

  1. 事業承継・引継ぎ支援センターへの相談(無料・全国47都道府県設置)
  2. M&Aマッチングプラットフォームの活用(BATONZ・事業承継M&A等)
  3. M&A専門アドバイザー・仲介会社への依頼
  4. 事業の一部だけを譲渡し、残りを縮小・清算する部分廃業
  5. 全事業を計画的に清算する廃業

事業承継・引継ぎ支援センターは国が設置する公的相談窓口のため相談に費用がかからず、第三者へのマッチング支援も受けられます。廃業は最後の選択肢として位置づけ、まず相談窓口に早期にコンタクトをとることが現実的な第一歩です。仲介会社やアドバイザーに依頼する場合は、中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録されているかどうかを確認しておきます。後述する事業承継・M&A補助金の専門家活用枠で補助されるFAや仲介の費用は、登録された支援機関によるものに限られます。建設業では職人の技術や許可の価値が高く、適切な買い手が見つかる可能性は他業種より高いと言えます。

事業承継の方法を選ぶ際の判断基準

株式取得や保証引き受けが必要な場合は、建設業の資金調達も同時に検討します。

建設業事業承継の方法を選ぶ際は、以下の判断基準を軸に検討します。

判断基準確認ポイント
後継者の有無親族・社内に適任者がいるか
承継のスピード経営者の年齢・健康状態・引退希望時期
建設業許可の種類特定建設業か一般建設業か、保有許可業種の数
会社規模・財務状況自己資本・工事実績・負債の状況
税務負担事業承継税制の特例適用が可能か
従業員の雇用継続職人・技術者の処遇をどう守るか

特に建設業では「経営業務の管理責任者」と「営業所技術者等」(2024年12月の改正前は専任技術者)の要件を後継者が満たせるかどうかが許可継続の鍵を握ります。M&Aのうち事業譲渡や合併、会社分割を選ぶ場合は、建設業許可の「事前認可申請」を活用することで、許可の空白期間を生じさせずに引き継ぐことができます。理想的には引き継ぎ完了まで5〜10年の準備期間を確保し、早い段階から専門家に相談することが承継を成功させる最短ルートです。中小企業庁の事業承継ガイドラインも、平均引退年齢が70歳前後であることを踏まえ、おおむね60歳頃には事業承継に向けた準備に着手することが望ましいとしています。

建設業許可を引き継ぐための認可制度と手続きの流れ

建設業事業承継において最大の懸念のひとつが、建設業許可をどう扱うかです。令和2年10月の法改正により「事前認可制度」が新設され、許可番号や経審結果を含む業者としての地位をそのまま引き継げるようになりました。廃業して新規申請し直す必要があると思い込んでいるケースは今も多いですが、正しい手続きを踏めば空白期間なく承継できます。

令和2年改正で何が変わったか(旧制度との比較)

令和2年10月1日施行の建設業法改正(法第17条の2・17条の3)により、事業譲渡・合併・分割・相続の場面で「承継認可」を取得できる制度が整備されました。

項目旧制度(改正前)新制度(改正後)
許可の扱い廃業 + 新規申請が必要事前認可で地位をそのまま承継
空白期間廃業日〜新規取得日まで発生空白期間なし
許可番号新番号になる承継可能
経審結果リセット承継可能
監督処分承継の仕組みなし被承継人が受けた監督処分も承継
相続の申請期限制度なし死亡後30日以内

旧制度では、廃業から新規許可取得までの間、軽微な工事しか請け負えない空白期間が生じ、発注者・下請けからの信頼にも影響していました。改正後はこの問題が解消され、建設業事業承継がより円滑に進められます。

国土交通省の建設業許可事務ガイドラインは、地位の承継を、許可を受けたことによって発生する権利と義務の総体を引き継ぐことと説明しています。経営事項審査の結果だけでなく、監督処分も引き継ぐ点に注意が必要です。一方、建設業法の罰則による刑罰は、違反行為をした被承継人そのものに科されるもので、承継人には引き継がれません。

認可を受けられない場合も決まっています。

認可を受けられない場合対応
許可を受けている建設業の一部だけを承継しようとする承継しない業種を先に廃業してから申請する
同じ業種で、被承継者が一般建設業、承継者が特定建設業(またはその逆)の許可を持っている申請の前に、どちらかの許可を廃業する
承継の事実が発生した後に申請する(相続を除く)さかのぼっての認可はできない

一部だけの承継が認められないことは国土交通省のガイドラインに、それぞれの対応と2行目、3行目は大阪府の「建設業認可申請の手引き」(令和7年3月版)に書かれています。

認可申請に必要な書類と申請先

申請先は、許可の種類によって次のとおり異なります。

許可の種類申請先
都道府県知事許可許可を受けた都道府県の許可行政庁
国土交通大臣許可承継人の主たる営業所を管轄する地方整備局等

承継によって都道府県知事許可から国土交通大臣許可に切り替わる場合は、地方整備局等への認可申請とあわせて、認可申請をした旨を都道府県知事に届け出ます(様式第22号の9)。

認可申請書の様式は、承継の形ごとに分かれています。

承継の形認可申請書の様式
譲渡及び譲受け様式第22号の5
合併様式第22号の7
分割様式第22号の8
相続様式第22号の10

主な提出書類は以下のとおりです。大阪府は、認可申請の様式に加えて、許可の新規申請と同等の書類を準備するよう案内しています。

  • 認可申請書と別紙(役員等の一覧表、営業所一覧表、営業所技術者等一覧表)
  • 事業譲渡・合併・分割に関する契約書または協議書の写し
  • 承継者・被承継者双方の登記事項証明書
  • 経営業務の管理責任者に関する証明書類
  • 営業所技術者等に関する証明書類
  • 財産的基礎を証明する書類(残高証明書等)
  • 健康保険等の加入状況及びその確認資料の提出に関する誓約書(様式第22号の6)

大阪府の手引きでは、認可申請に手数料はかかりません。ただし、審査過程で追加資料の提出を求められることがあるため、早めに許可行政庁へ事前相談することを強くすすめます。

経営業務の管理責任者と専任技術者の要件を後継者が満たす方法

建設業許可の維持には、承継日時点で経営業務の管理責任者(経管)と営業所技術者等(2024年12月の改正前は専任技術者。以下、専技)が常勤している必要があります。認可の基準は許可の基準と同じで、国土交通大臣許可の認可基準も、一般建設業は許可と同様の基準を満たすことを求めています。

経管については、後継者本人が経管の要件を満たしていることが理想です。常勤役員等のうち1人が、次のいずれかに該当する必要があります。

区分必要な経験
経営業務の管理責任者としての経験建設業に関し5年以上
経営業務の管理責任者に準ずる地位(執行権限の委任を受けた執行役員など)で経営業務を管理した経験建設業に関し5年以上
経営業務の管理責任者に準ずる地位で、管理責任者を補佐した経験建設業に関し6年以上
常勤役員等と、それを直接に補佐する者(財務管理、労務管理、業務運営)を置く体制常勤役員等は、建設業の役員等2年以上を含む役員等5年以上などの経験

要件の詳しい読み方は経営業務の管理責任者の記事で解説しています。

後継者がまだ要件を満たしていない場合は、現経営者の在任中から副社長・取締役などの役員として実務経験を積ませる計画が有効です。承継日から逆算して最低でも5年前には役職に就かせることが目安になります。

専技については、承継後も原則として従前と同一の技術者が引き続き常勤していなければなりません。東京都の手引は、営業所技術者等は原則として申請時点の者が継続している必要があり、変更が必要な場合は認可申請の前か、承継の後2週間以内に変更届を提出するよう案内しています。後継者を専技として登録するには、対象業種の資格(施工管理技士・建築士等)または10年以上の実務経験(指定学科の大学・高専卒は3年、高校卒は5年)が求められます。

個人事業主が法人化・相続・事業譲渡する場合の許可の扱い

個人事業主が建設業事業承継を行う主なパターンと、許可の扱いは次のとおりです。

パターン制度上の位置づけ許可の扱い
個人→法人(法人成り)事業の全部譲渡事前認可で承継可能
個人事業主の死亡・相続相続死亡後30日以内に認可申請で承継可能
第三者への事業譲渡(M&A)事業の全部譲渡事前認可で承継可能
会社分割会社分割事前認可で承継可能

法人成りの場合、新設法人が個人事業主の建設業許可を承継するには「事業の全部譲渡」として事前認可を取得します。承継認可が下りれば、法人として許可番号・経審実績をそのまま引き継げます。相続の場合は、共同相続人全員の同意を得たうえで死亡後30日以内に申請することが条件です。大阪府の手引きによると、相続人が認可を申請した場合は、被相続人の死亡の日から申請に対する処分があるまでの間、相続人は建設業の許可を受けたものとして扱われます。申請の時点で被相続人の許可が有効期間内であることも必要です。

承継認可の申請から取得までの標準スケジュール

承継認可は、承継の効力が発生する日より前に受けておく必要があります。申請の期限と審査にかかる期間は許可行政庁ごとに決められているため、計画的に動くことが不可欠です。公表されている例は次のとおりです。

許可行政庁事前相談申請の期限標準処理期間
国土交通大臣(地方整備局等)認可申請が見込まれる場合は、なるべく早く申し出て事前打ち合わせ承継の日より前に認可を受けられる時期許可申請と同様で、おおむね90日程度
大阪府知事遅くとも効力発生日の2か月前を目途に相談(予約制)効力発生日の30日前まで(45日前までを推奨)。相続は死亡後30日以内受付から30日(土日祝を含む)

国土交通大臣許可の標準処理期間は、形式上の不備の補正にかかる期間を含みません。大阪府も、補正の状況によっては標準処理期間が延びる場合があるとしています。ほかの都道府県は受付期間が異なるため、申請先の手引きで確認してください。

標準的な流れは以下のとおりです。

  1. 承継予定日の3〜4ヶ月前に許可行政庁へ事前相談
  2. 許可行政庁が定める期限までに申請書類を揃えて申請
  3. 審査(大阪府知事許可は30日、国土交通大臣許可はおおむね90日程度が目安)
  4. 認可取得後、承継予定日に事業承継を実行
  5. 承継後に提出することが認められた書類を、期限内に提出

認可後の許可の有効期間は、大阪府の手引きでは、事業譲渡・合併・分割の場合は効力発生日の翌日から5年、相続の場合は認可を受けた日の翌日から5年です。残っていた有効期間を引き継ぐのではなく、承継を機に新しく5年が始まります。

審査では許可要件に加え、財産・債務・雇用関係の承継手続きが適正に行われているかも確認されます。通常の新規申請よりも確認事項が多く、補正が入ると期間が延びるため、余裕をもったスケジュール設定が重要です。

建設業の事業承継で直面する課題と対処法

建設業事業承継では、許可の維持・技術者の引き継ぎ・税負担の軽減・統合後の運営という4つの課題が同時に発生します。それぞれに対処法があり、事前に手順を把握しておくことでリスクを大幅に減らせます。

許可番号・格付けを維持できるかの確認ポイント

建設業の事業承継では、許可番号や経営事項審査(経審)の点数を引き継げるかどうかが最初の関心事になります。前セクションで解説した事前認可制度を活用すれば、合併・事業譲渡・相続のいずれの場合も旧許可番号と経審結果をそのまま承継できます。

確認すべき主なポイントは以下のとおりです。

  • 事業譲渡・合併・会社分割の場合は、承継の効力発生前に認可申請を完了させること(事後申請は認められない)
  • 相続の場合は、許可を保有していた個人が死亡した日から30日以内に申請すること(期限超過で許可失効)
  • 許可を持たない法人に承継する場合は旧許可番号がそのまま引き継がれ、双方が許可を持つ場合はどちらの番号を引き継ぐか選択できる
  • 承継によって許可権者が都道府県知事から国土交通大臣に変わる場合は、新しく国土交通大臣許可の番号が付く

申請に必要な書類は新規許可申請に準じた内容に加え、承継の根拠となる契約書等が求められます。行政書士への相談を早期に行い、承継スケジュールに申請期限を組み込んでおくことが重要です。

技術者継承と下請け関係の継続をどう守るか

建設業許可を維持するためには、承継後の組織に経営業務の管理責任者(経管)と営業所技術者等(専技)を確保することが法定要件です。特に専技については、承継前と同一の人物が引き続き常勤していることが原則とされており、技術者が退職すると許可業種の維持そのものが危うくなります。

技術者継承と下請け関係の継続に向けた対処法を整理すると次のとおりです。

課題対処法
経管・専技の不在リスク承継前に後継候補を育成し、重複期間を設けて引き継ぐ
監理技術者の不足承継先に必要な資格保有者が在籍しているか早期に確認する
下請・元請との関係断絶承継前から発注者・下請先への説明を行い、信頼関係を維持する
取引継続への不安許可番号の継続を証明する書類を取引先に提示する

発注者や下請業者が承継を知らないまま工事が進むケースは、信頼を損なう原因になります。建設業事業承継の手続きと並行して、早い段階で関係者への周知を進めることが現実的な対策です。

事業承継税制の特例を活用してコストを抑える方法

法人版事業承継税制の特例措置は、後継者が先代経営者から株式等を取得する際の贈与税・相続税を100%猶予し、要件を満たせば最終的に免除される制度です。一般措置と比べて猶予割合・対象株式数の上限がなく、雇用確保要件も柔軟化されており、建設業を含む中小企業にとって資金負担を大幅に圧縮できる手段となっています。

特例措置を活用するために押さえておくべき要件と期限は以下のとおりです。

  • 特例承継計画の提出期限:2027年9月30日まで(認定経営革新等支援機関の指導と助言を受けて作成し、都道府県に提出して確認を受ける)
  • 贈与・相続の対象期間:2018年1月1日〜2027年12月31日
  • 都道府県知事による円滑化法の認定を取得すること
  • 贈与の場合は贈与を受けた年の翌年1月15日まで、相続の場合は相続開始後8か月以内に認定申請を行うこと

中小企業庁によると、特例措置では親族外を含むすべての株主から、代表者である後継者(最大3人)への贈与・相続が対象になります。事業承継後5年間の平均で雇用の8割を維持するという要件を満たせなかった場合も、理由を記載した書類を提出することで納税猶予を継続できます。

2026年時点では申請余地がありますが、計画書の作成から認定取得まで一定の時間を要します。税理士と早期に連携し、承継スケジュールに合わせた申請計画を立てることが費用を抑えるうえでの要諦です。

設備投資やM&Aの専門家費用には、中小企業庁の事業承継・M&A補助金が使える場合があります。2026年9月4日に公表された十六次公募の概要は次のとおりで、申請の受付期間は2026年10月2日から11月6日17時まで(予定)、申請は電子申請(Jグランツ)のみです。

枠対象補助率補助上限
事業承継促進枠5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している者の設備投資など2分の1(小規模事業者は3分の2)800万円(一定の賃上げを実施する場合は1,000万円)
専門家活用枠(買い手支援類型)M&Aの専門家活用の費用(FA・仲介費用、デュー・ディリジェンスなど)3分の1、2分の1、3分の2600万〜800万円(100億企業要件を満たす場合は2,000万円)
専門家活用枠(売り手支援類型)同上2分の1、3分の2600万〜800万円
PMI推進枠(PMI専門家活用類型)M&A後の経営統合に係る専門家活用の費用2分の1150万円
PMI推進枠(事業統合投資類型)M&A後の経営統合に係る設備投資など2分の1(小規模事業者は3分の2)800万円(一定の賃上げを実施する場合は1,000万円)
廃業・再チャレンジ枠事業承継・M&Aに伴い既存事業を廃業する費用3分の2300万円

専門家活用枠の600万〜800万円という上限は、デュー・ディリジェンス費用を申請する場合に200万円を加算し、800万円を上限とする仕組みです。小規模事業者等に限った小規模売り手支援類型(補助率3分の2、上限450万円)もあります。補助率や上限には細かい条件があり、採択は審査で決まるため、申請前に公募要領の案内ページと補助金の公式サイトで最新の条件を確認してください。建設業で使えるほかの制度は、建設業の補助金の記事で整理しています。

承継後の統合(PMI)で失敗しないための注意点

建設業事業承継において、許可の承継手続きが完了した後に経営統合(PMI)をおろそかにすると、想定していたシナジーを得られないまま人材が流出するリスクが生じます。特に技術者や職人は属人的なノウハウを持つことが多く、離職が即座に受注力の低下に直結します。

PMIで失敗しやすい主な要因と対処法は以下のとおりです。

失敗要因対処法
従業員の不安・反発による離職承継直後に代表者が直接説明の場を設け、処遇・雇用継続を明示する
元請・下請関係の棄損承継後の担当者を早期に決め、取引先への挨拶回りを速やかに実施する
経営管理・会計システムの不統一統合後100日以内を目安に基幹システムの整理計画を策定する
現場ルール・安全管理基準の乖離両社の施工管理フローを比較し、統一マニュアルを作成する

PMIの検討を早い段階から始めた企業は、統合後の期待成果を得やすいという調査結果が出ています。M&Aや第三者承継を選択した場合でも、建設業事業承継の成否はPMIの質で決まると理解しておくことが肝心です。

建設業の事業承継を成功させるための相談先と進め方

建設業事業承継を成功させるには、適切な相談先を選ぶことが第一歩です。行政書士・税理士・M&A仲介会社・公的機関はそれぞれ異なる専門性を持つため、自社の状況に合わせて使い分けることが重要になります。

行政書士・税理士・M&A仲介会社それぞれの役割

建設業の事業承継では、複数の専門家が関与するのが一般的です。各専門家の役割を正しく理解することで、無駄なコストや手続き漏れを防げます。

専門家主な役割建設業での強み
行政書士建設業許可の承継申請・変更届・各種許認可手続き許可の空白期間をなくす申請代行に強い
税理士株式・資産の評価、事業承継税制の活用、相続税・贈与税の節税設計親族内承継や自社株対策を一括サポート
M&A仲介会社買い手・売り手のマッチング、交渉支援、デューデリジェンス調整後継者がいない場合の第三者承継に強い

行政書士は建設業許可の承継申請を専門的に扱います。許可の承継認可申請は許可行政庁が定める期限までに提出する必要があり(大阪府知事許可は効力発生日の30日前まで)、期限管理が重要です。事前相談から申請、承継後の書類提出までの段取りを任せられる点が、行政書士に依頼する利点です。

税理士は自社株の評価や事業承継税制の活用を担います。親族への承継では株式の贈与税・相続税が大きな課題になるため、早期から顧問税理士に相談することが節税の鍵になります。

M&A仲介会社は後継者不在の場合に特に有効です。建設業に特化した実績を持つ仲介会社を選ぶと、経営業務の管理責任者や営業所技術者等の要件確認など業界特有の論点を踏まえた支援が受けられます。手数料は、中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版)が紹介するレーマン方式の一例では、基準となる価額の5億円以下の部分に5%を乗じます。譲渡額1億円を基準にすれば成功報酬は500万円(税抜)です。ただし同ガイドラインは、基準となる価額を譲渡額とするか移動総資産額とするかなど算定の方法が仲介者やFAによって異なること、最低手数料を設ける仲介者が多いことも指摘しています。着手金や月額報酬の有無を含め、手数料の算出方法を契約前に確認しておくことが重要です。

公的機関(事業承継・引継ぎ支援センター)の活用法

事業承継・引継ぎ支援センターは、国が全国47都道府県に設置している公的相談窓口です。親族内への承継も第三者への引継ぎも対象で、建設業を含むあらゆる業種の中小企業・個人事業主が無料で相談できます。

主な支援内容は次のとおりです。

  • 事業承継の方向性・スケジュールの相談
  • 後継者候補の整理・後継者育成計画の立案支援
  • 後継者不在の場合のM&Aマッチング(後継者人材バンクへの登録・紹介)
  • 行政書士・税理士・弁護士など適切な専門家の紹介

相談は無料のため、まずここに相談することで全体像を把握できます。センターは各都道府県の商工会議所などに置かれており(設置場所は都道府県によって異なります)、地方の建設会社でも比較的アクセスしやすい環境が整っています。後継者不在の場合には、創業を希望する人と引き合わせる「後継者人材バンク」を通じたマッチングも行っています。各センターの所在地と連絡先は、中小企業基盤整備機構の事業承継・引継ぎポータルサイトで確認できます。

建設業の事業承継を検討し始めるタイミングの目安

建設業事業承継は、一般的な事業承継よりも早めの着手が必要です。建設業許可に関連する人的要件(経営業務の管理責任者・営業所技術者等)の引き継ぎに時間がかかるためです。

目安となる準備期間は以下のとおりです。

  • 後継者が経営業務の管理責任者として認められるには、建設業に関し5年以上の経営経験が必要
  • 役員に就かず、管理責任者に準ずる地位で補佐した経験で認められるには、6年以上が必要
  • 許可の承継認可申請は、許可行政庁が定める期限までに行う(大阪府知事許可は効力発生日の30日前まで、事前相談は2か月前を目途)

これらを踏まえると、後継者が社内にいる場合でも最低6〜7年前から育成を開始することが現実的な目安になります。後継者が社外・第三者の場合は、M&Aの交渉・デューデリジェンスから成約・許可承継手続きまでに1〜2年を要するケースが多くなります。中小企業庁の事業承継ガイドラインは、おおむね60歳頃には準備に着手することが望ましく、70歳を超えている場合はすぐにでも着手すべきだとしています。

建設業の事業承継で最も多い失敗は「検討開始が遅すぎる」ことです。廃業を選ぶ前に、事業承継・引継ぎ支援センターへの無料相談を活用し、選択肢を整理することが第一歩になります。

まとめ:建設業の事業承継は「許可の手続き」と「戦略の選択」を同時に動かす

建設業の事業承継は、後継者への経営移行と同時に建設業許可の継続可否を確認することが出発点です。令和2年の法改正で認可制度が整備され、許可番号を維持したまま承継できるルートが広がりました。

本記事のポイント

  • 親族内・従業員・M&Aの3つの承継方法にはそれぞれ異なる手続きと許可への影響があり、自社の状況に合わせた選択が必要
  • 令和2年改正で認可申請による許可番号の引き継ぎが可能になったが、管理責任者・営業所技術者等の要件を後継者が満たすことが前提
  • 行政書士・税理士・M&A仲介・事業承継支援センターを早期から並走させることで、手続きの抜け漏れとコストを最小化できる

許可の手続きを先に動かすか、戦略の選択を先に決めるかで、スケジュールと費用が大きく変わります。事業承継の検討を始めるタイミングが早いほど、使える選択肢は多くなります。

2026年時点で後継者問題を抱える建設会社は増えており、支援制度も拡充されています。専門家への相談は早ければ早いほど有利です。

建設業 事業承継に関するよくある質問

参考文献

  1. 建設業許可事務ガイドライン(令和7年2月1日から適用)- 国土交通省
  2. 建設業許可 手引、申請書類等(手引 令和8年度)- 東京都都市整備局
  3. 建設業者としての地位承継に係る事前認可申請の様式 - 大阪府
  4. 建設業認可申請の手引き(令和7年3月版)- 大阪府
  5. 事業承継ガイドライン - 中小企業庁
  6. 中小M&Aガイドライン(第3版)- 中小企業庁
  7. 中小企業生産性革命推進事業「事業承継・M&A補助金」(十六次公募)の公募要領を公表します - 中小企業庁
  8. 国土交通大臣に係る建設業許可及び建設業者としての地位の承継認可申請について(国土交通省)
  9. 法人版事業承継税制(特例措置)|中小企業庁
  10. 事業承継・引継ぎ支援センター|事業承継・引継ぎポータル(中小企業基盤整備機構)

執筆者

Construction DX 編集部
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