建設業 2024年問題の罰則は拘禁刑6か月・罰金30万円と回避策
この記事のポイント
建設業2024年問題の罰則は拘禁刑6か月以下・罰金30万円以下。是正勧告から刑事処分、企業名公表へと段階的に進み、公表企業は建設業が業種別最多。回避には労働時間の可視化、適正な工期設定、ICT活用、36協定の特別条項の適切な運用が有効。
「36協定の上限を超える残業が発生していて、建設業の2024年問題における罰則がどれほど重いのか分からず不安です」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 建設業の2024年問題における罰則の内容
- 罰則が科されるまでの流れ
- 罰則を回避するための実務対応策
建設業の2024年問題における罰則は、拘禁刑6か月以下または罰金30万円以下です。
送検や企業名公表による信用毀損のリスクも、労働時間管理を徹底すれば十分に回避できます。ここから罰則の内容と回避策を詳しく解説します。
建設業の2024年問題における罰則とは
2024年問題は建設業全体において時間外労働の上限規制が罰則付きで適用されるようになった大きな変化です。上限を超える残業をさせた事業者には、労働基準法に基づき拘禁刑や罰金が科される可能性があります。
上限規制の概要、罰則の対象となる違反行為、罰則の具体的な内容、建設業に規制が適用された背景を順に見ていきます。
時間外労働の上限規制の概要
時間外労働の上限規制とは、残業時間の上限を法律で定めたルールです。働き方改革関連法により、大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から導入されました。
建設業は自動車運転業務や医師とともに、業務の特性や重層下請構造などの取引慣行上の課題を理由に、適用が5年間猶予されていました。猶予期間は2024年3月31日で終了し、同年4月1日から建設業にも上限規制が本格適用されています。
上限規制の基本ルールは次のとおりです。
| 項目 | 上限の内容 |
|---|---|
| 時間外労働の原則 | 月45時間以内・年360時間以内 |
| 特別条項による臨時的な事情がある場合 | 年720時間以内 |
| 時間外労働と休日労働の合計 | 単月100時間未満 |
| 時間外労働と休日労働の合計(複数月平均) | 2〜6か月の平均がいずれも月80時間以内 |
| 月45時間を超える時間外労働 | 年6回まで |
罰則の対象となる違反行為
罰則の対象になるのは、36協定で定めた上限を超えて残業をさせる行為です。違法な建設業の2024年問題の抜け道を探るような行為や、36協定を締結・届出せずに時間外労働をさせる行為も対象になります。
36協定とは、時間外労働や休日労働について労使間で結ぶ協定です。対象になるのは元請けだけでなく、下請けの専門工事業者を含め建設業に関わるすべての企業・事業場になります。
前章で紹介した5つの上限は、いずれか一つでも超えれば違反です。特別条項付きの36協定を結んでいても、上限を超えて残業させれば違反になる点は変わりません。
災害の復旧・復興事業に従事する場合は例外規定があります。単月100時間未満と複数月平均80時間以内という規制は適用されませんが、年720時間以内、月45時間を超える残業は年6回までという上限は引き続き適用されます。
罰則の内容は懲役や罰金
上限規制の根拠となるのは労働基準法36条4項です。これに違反した場合、同法119条1号に基づき罰則が科されます。
罰則の内容は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。2025年6月には刑法が改正され、従来の懲役と禁錮は拘禁刑という刑罰に一本化されました。
罰則の対象は事業者本人だけではありません。違反行為を実際に行った現場責任者などの担当者も、両罰規定により罰則の対象になります。
さらに実務上は、刑事罰そのものより次のリスクの方が経営への影響が大きくなりやすい傾向にあります。
- 労働基準監督署からの是正勧告に従わない場合の送検
- 厚生労働省による違反事案の企業名公表
- 公表を受けた取引先からの契約解除や受注減少
- 元請けと下請けの間での責任の押し付け合いによる関係悪化
罰則の重さだけでなく、こうした社会的信用の毀損リスクまで理解しておくことが欠かせません。
建設業に上限規制が適用された背景
建設業に上限規制が適用された背景には、業界特有の構造的な課題があります。
建設業は工期を優先する発注慣行や重層下請構造が根強く、長時間労働が常態化しやすい業種です。慢性的な人手不足も、一人当たりの残業時間を押し上げてきました。
こうした事情から、他業種と同時に規制を適用すると現場が混乱すると判断されました。2019年の働き方改革関連法施行の時点で、建設業には5年間の適用猶予が設けられています。
猶予期間中には、国土交通省と厚生労働省が中心となり環境整備が進められました。工期に関する基準の策定、週休2日の促進、ICT活用による生産性向上などが代表的な取り組みです。
それでもなお、人手不足と厳しい工期設定という構造的な問題は残っています。罰則の知識だけでなく、労働時間管理の効率化や適正な工期交渉まで踏み込んだ対応が、2025年問題以降を見据えた建設業には求められます。
建設業の2024年問題で罰則が科されるまでの流れ
建設業2024年問題における時間外労働の上限規制違反は、発覚した瞬間に罰則が科されるわけではありません。労働基準監督署による調査と是正勧告、改善が見られない場合の刑事処分、そして悪質なケースでの企業名公表という段階を踏んで進みます。
自社が今どのリスク段階にあるかを把握するために、それぞれの段階で何が起こるのかを見ていきましょう。
是正勧告・指導
労働基準法違反を疑われた企業に対し、労働基準監督署はまず立入調査を実施します。従業員からの申告や定期監督、重大事故の発生などが調査のきっかけです。
調査で時間外労働の上限規制違反などが確認されると、労働基準監督署は是正勧告書または指導票を交付します。法令違反が明確な場合は是正勧告書、より軽微な改善事項がある場合は指導票が用いられます。
企業は交付書類にもとづき、指定された改善期日までに労働時間管理の見直しなどを行い、是正報告書を提出する義務を負います。是正勧告そのものに法的な強制力はありませんが、軽視は禁物です。
報告内容によっては再監督が行われ、改善が確認できれば指導は終了します。一方で改善が不十分だったり是正に応じなかったりすると、刑事処分や企業名公表へ進む可能性が高まります。
刑事処分(送検)
是正勧告に従わない場合や、違反の程度が重大かつ悪質と判断された場合、労働基準監督署は行政指導から刑事事件としての対応に切り替えます。労働基準監督官は特別司法警察職員としての権限を持ち、逮捕や捜索差押えなどの強制捜査も可能です。
捜査では、タイムカードや賃金台帳などの帳簿類、関係者の供述調書が証拠として収集されます。捜査は任意の協力にもとづくのが原則ですが、企業側が協力しない場合や証拠隠滅のおそれがある場合は、裁判所の令状にもとづく強制捜査に移行することもあります。
証拠がそろうと事件は検察官に送致され、これがいわゆる書類送検です。起訴するかどうかを決めるのは検察官であり、起訴率はおよそ4割にとどまるといわれています。
起訴された場合は、公開の法廷で審理される正式手続き、または書面審理のみで罰金刑を言い渡す略式手続きのいずれかで進みます。有罪が確定すると、時間外労働の上限規制違反に対しては6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されます。
| 処分の段階 | 主な内容 | 法的強制力 |
|---|---|---|
| 是正勧告・指導 | 改善期日までの労働時間是正と報告書提出 | なし |
| 書類送検 | 検察官への事件送致、起訴・不起訴の判断 | あり(捜査権) |
| 刑事罰 | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | あり |
法人と代表者の双方が処罰対象となる両罰規定が適用される点も、経営者が見落としてはいけない事実です。
企業名の公表
刑事処分と並行して経営への打撃が大きいのが企業名の公表です。厚生労働省は過労死等ゼロを目指す緊急対策の一環として、労働基準関係法令違反に係る公表制度を運用しています。
公表の対象となるのは次のようなケースです。
- 労働災害による死亡事故など重大な事案が発生した場合
- 違法な長時間労働が複数の事業場で認められた場合
- 同一の本社について2回以上の是正勧告が行われた場合
公表期間はおおむね1年間とされ、その間は企業名・所在地・違反内容・公表事案の概要が公開され続けます。この制度による公表企業のうち、建設業は業種別で最も多くを占める状況です。
人手不足と厳しい工期のもとで長時間労働が常態化しやすい業界構造が背景にあるといえます。公表されると社会的信用が低下するだけでなく、公共工事の入札資格の停止や取引先からの契約解除、新規受注の減少といった経営リスクにも直結します。
罰則そのものの重さよりも、この信用毀損のリスクを重く受け止めるべきといえるでしょう。
罰則以外に建設業が受ける2024年問題の影響
建設業2024年問題罰則の話題ばかりが注目されがちですが、実際には罰則を受けなくても経営に打撃を与える影響が広がっています。時間外労働の上限規制は、現場の人手や工事コスト、取引先との関係性にまで波及するためです。
ここでは人手不足の悪化、コストの増加、元請けと下請け間の責任分担への影響という3つの観点から解説します。
人手不足の悪化
時間外労働の上限規制により、既存の従業員が働ける時間そのものが減っています。これまで残業でカバーしてきた業務量を、限られた就業時間内で処理しなければならなくなったためです。
東京商工リサーチが2024年4月に発表した調査では、すでに8割超の建設会社が正社員不足と回答しています。この状況に加えて残業時間の削減が求められることで、1人あたりの業務負荷はさらに重くなります。
建設業界では2025年時点で就業者数が約90万人不足するとの見通しも示されており、人手不足は今後も長期化する見込みです。対策を講じない企業では、次のような悪循環が生じやすくなります。
- 残業できないぶん納期に間に合わせるための増員が必要になる
- 増員できず既存社員の負担が増え離職につながる
- 離職によってさらに人手が減り工事を受注できなくなる
コストの増加
労働時間の制約は、人件費と資材費の両面でコスト増加を招きます。限られた時間で同じ工事量をこなすには、人員の追加や外注の活用が必要になり、労務単価も上昇を続けているためです。
公共工事設計労務単価は2021年から2024年にかけて約15%上昇しました。あわせて建設資材物価も2021年1月と比較して土木部門で41%、建築部門で37%上昇しています。
主な項目を整理すると次のとおりです。
| 項目 | 変動幅 | 比較時点 |
|---|---|---|
| 公共工事設計労務単価 | 約15%上昇 | 2021年から2024年 |
| 建設資材物価(土木) | 41%上昇 | 2021年1月比 |
| 建設資材物価(建築) | 37%上昇 | 2021年1月比 |
こうしたコスト増加を価格に転嫁できない企業では収益が圧迫され、倒産や休廃業に至るケースも増えています。2025年には建設業の倒産件数が2000件を超え、休廃業や解散も過去最多の1万件を突破しました。
2025年12月に全面施行された改正建設業法では、価格転嫁や工期変更に関する新しい契約ルールが導入されています。こうした流れを踏まえた適正な価格交渉が欠かせません。
元請けと下請け間の責任分担への影響
建設業では元請けの下に複数の下請けが連なる多重構造が一般的です。下請けは元請けの工期や指示に合わせて作業する立場にあり、これまでも長時間労働を余儀なくされやすい構造的な課題を抱えてきました。
時間外労働の上限規制を直接守る義務を負うのは、労働者を雇用する下請け企業です。しかし元請けが無理な工期で突貫作業を指示した場合には、下請けだけでなく元請けや発注者まで責任を問われる可能性があります。
下請けが自らの請負責任で突貫作業を行い、その結果として残業が上限を超えた場合も同様です。工期や工程に無理がなかったかが問われます。
このため今後は、次のような対応が元請け側にも求められます。
- 発注段階で下請けの労働時間を考慮した工期を設定する
- 施工中の進捗を把握し無理な突貫作業を指示しない
- 下請けの残業状況を定期的に確認する体制を整える
罰則の有無にかかわらず、元請けと下請けの双方が労働時間管理に関わる責任を共有する時代になっているといえます。
建設業が罰則を回避するための対策
建設業2024年問題の罰則を回避するには、労働時間管理、工期設定、ICTツール、36協定の運用を同時に見直すことが欠かせません。労働時間を正確に把握するために建設キャリアアップシステムなどを導入するのも効果的です。罰則の直接原因は上限を超える時間外労働であり、その背景には慢性的な人手不足と厳しい工期設定という構造的な課題があります。
勤怠管理システムで実労働時間を可視化し、工期を適正化し、ICTで生産性を高め、特別条項を正しく運用すれば、上限規制の違反リスクは大きく下がります。ここからは、それぞれの具体策を見ていきます。
労働時間の適正な管理
罰則を回避する第一歩は、時間外労働の実態を正確に把握することです。現場でのccusの技能者登録を進め、就業履歴を活用する体制も有効です。上限規制は原則として月45時間・年360時間であり、特別条項を適用しても年720時間以内、複数月平均80時間以内、単月100時間未満という具体的な数値で管理されます。
有効な対応は次のとおりです。
- クラウド型勤怠管理システムを導入し、現場からスマートフォンやパソコンで出退勤や残業時間を打刻する
- 管理者がリアルタイムで各従業員の労働時間を確認し、上限に近づいた段階で警告する
- 36協定で定めた上限時間と実績を月次で突き合わせ、超過の兆候を早期に発見する
労働時間を客観的なデータで管理する体制を整えれば、上限規制違反の未然防止につながります。
適正な工期の設定
労働時間管理だけでは限界があり、根本原因である工期の適正化が欠かせません。無理な工期のまま受注すると、現場は際限のない残業でしか工程を守れなくなり、上限規制に抵触しやすくなります。
国土交通省は建設業法に基づき工期に関する基準を定め、休日や気象条件、準備期間などを考慮した工期設定を求めています。
| 見直しの視点 | 具体的な取り組み |
|---|---|
| 発注段階 | 週休2日を前提とした工期を見積書や契約書に明記する |
| 施工段階 | 天候不順や資材調達の遅れを見込んだ余裕日数を確保する |
| 元請下請間 | 工期変更が生じた場合は速やかに協議し、契約を書面で見直す |
適正な工期を交渉し契約に反映させることは、罰則回避だけでなく下請企業へのしわ寄せ防止にも直結します。
ICTツールの活用
工期を短縮しながら労働時間を抑えるには、ICTツールによる生産性向上が有効です。人手を増やせない状況でも、業務を効率化できれば同じ工程を少ない労働時間で終えられます。
国土交通省もICT施工やi-Constructionの推進により、測量や施工管理の省力化を後押ししています。代表的なツールは次のとおりです。
- ドローンやレーザースキャナーによる測量の自動化
- BIMやCIMを用いた設計データの一元管理
- 施工管理アプリによる報告書作成や写真整理の効率化
- ICT建機による丁張り作業の省略
これらのツールは初期投資が必要になりますが、長期的には残業削減と生産性向上を両立させる手段になります。
36協定の特別条項の適切な運用
最後に押さえておきたいのが、建設業の36協定に定められる特別条項を正しく運用することです。特別条項は臨時的な繁忙期に限って時間外労働を延長できる仕組みで、乱用すれば上限規制違反に直結します。
特別条項を適用できるのは、通常予見できない業務量の増加など臨時的な事情に限られます。
- 特別条項の適用回数や理由を協定書に具体的に記載する
- 適用は年6回までを目安とし、恒常的な残業の口実にしない
- 適用時こそ実労働時間を細かく記録し、単月100時間未満の基準を必ず守る
特別条項を限定的かつ適切に運用することで、繁忙期の対応と法令遵守を両立できます。
まとめ:建設業の2024年問題における罰則は懲役6か月以下または罰金30万円以下、鍵は労働時間管理の徹底
本記事では、建設業の2024年問題における罰則の内容から、罰則が科されるまでの流れ、罰則以外への影響、罰則を回避するための対策までを解説しました。時間外労働の上限規制に違反すると、拘禁刑6か月以下または罰金30万円以下という重い罰則が科される可能性があります。
なお2025年6月の刑法改正により、懲役は拘禁刑という名称に統一されています。
本記事のポイント
- 罰則は拘禁刑6か月以下または罰金30万円以下
- 是正勧告を経て刑事処分や企業名公表に至る流れがある
- 労働時間管理の徹底と適正な工期設定が回避の鍵
これらのポイントを押さえれば、送検や企業名公表による信用毀損のリスクを避けられます。自社の労働環境を適正に整え、取引先からの信頼も維持できるでしょう。
労働時間管理や工期設定にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
建設業の2024年問題の罰則に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Construction DX 編集部は、建設DX・建設テック・業界動向に関するニュースや解説記事を制作する編集チームです。最新の技術・市場・制度・導入事例をわかりやすく整理し、建設業界のDX推進に役立つ情報を中立的な視点で発信しています。
監修者
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