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建設業の時間外労働【2026年版】上限・罰則・移動時間を解説

制度・法対応

この記事のポイント

建設業には2024年4月から時間外労働の上限規制が適用。原則は月45時間・年360時間で、特別条項でも年720時間・単月100時間未満が上限。移動時間・手待ち時間は指揮命令下であれば労働時間に該当し、違反には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。

建設業の時間外労働【2026年版】上限・罰則・移動時間を解説

「建設業の時間外労働の上限規制が2024年から適用されたのはわかっているが、具体的な上限時間や特別条項の条件がよくわからない。規制を守りながら現場を回せるのか、正直なところ不安です」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • 月45時間・年360時間を原則上限とする規制の具体的な数字と特例条件
  • 移動時間・手待ち時間が労働時間に含まれるかどうかの判断基準
  • 違反時の罰則と、ICT活用を含む実践的な残業削減策

建設業の時間外労働には2024年4月から上限規制が適用されており、原則として月45時間・年360時間を超えることができません。

現場の繁閑差や発注者からの工期圧力があっても、法令の範囲内で対応策を組み合わせることは十分可能です。本記事では上限値の根拠から違反リスク、現場で使える改善策まで順を追って解説しますので、最後までお読みください。

建設業の時間外労働上限規制とは何か

2024年4月、いわゆる2024年問題は建設業全体に時間外労働の上限規制として適用されました。自社の現場が規制の範囲内に収まっているか、まず基本的な枠組みを押さえてください。

2024年4月に始まった建設業への適用

働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制は、2019年4月に大企業、同年10月に中小企業へ適用されました。建設業・自動車運転・医師の3業種は長時間労働の慣行が根強いとして5年間の猶予が設けられており、2024年4月1日にその猶予期間が終了しています。

以降、建設業のすべての事業者(大企業・中小企業を問わず)が上限規制の対象です。違反した場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

月45時間・年360時間が原則上限

時間外労働の原則上限は月45時間・年360時間です。これは法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた分の上限であり、休日労働は含みません。

この原則の範囲内であれば、通常の36協定(時間外労働・休日労働に関する協定届)を届け出るだけで対応できます。月45時間を超えて残業をさせるには、特別条項付き36協定の締結が必要です。

特別条項付き36協定を結んだ場合の上限(年720時間)

繁忙期や受注集中期など、臨時的な特別の事情がある場合は建設業の36協定の特別条項を締結することで、原則の限度時間を超えて時間外労働をさせることができます。

特別条項を使う場合でも、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 年間の時間外労働が720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計が2〜6か月の月平均でいずれも80時間以内
  • 月45時間を超えて残業できるのは年6か月以内

一つでも違反すれば罰則の対象となるため、すべての条件を同時に管理する必要があります。

一般則と建設業特例の違いを一覧で比較

建設業には一般則(他業種)と同じ規制が原則として適用されます。災害時の復旧・復興事業に限り、一部の規制が適用除外となっています。

規制項目一般の事業者建設業(通常工事)建設業(災害復旧・復興)
原則上限(時間外)月45時間・年360時間同左同左
特別条項時の年間上限720時間同左同左
単月の上限(時間外+休日労働)100時間未満同左適用なし
複数月平均の上限(時間外+休日労働)80時間以内同左適用なし
特別条項を使える月数年6か月以内同左同左

災害復旧・復興事業では単月100時間未満と複数月平均80時間以内の2つの規制が外れます。通常の建設工事ではこの除外は適用されないため、注意が必要です。

建設業で時間外労働が多い構造的な理由

建設業の長時間労働は、個々の企業や現場の努力だけでは解決しにくい、業界構造に根ざした問題です。建設業の週休2日制義務化がいつから始まるかといった行政の推進策があるものの、依然として多くの現場で対応が課題となっています。

発注者主導の工期設定と現場への皺寄せ

建設業では、工期は発注者が設定し、そこから元請・下請へと順に割り振られます。特に建設業で週休2日が個人事業主や一人親方に推奨されている現場でも、工期の圧力は現場に集中しやすい構造です。

発注者や元請から短納期の要求を断れない背景には、断れば次回以降の受注を失うリスクがあります。中小の専門工事業者では、元請との力関係上、追加工事や工程変更を直前に告げられても拒否できないケースが珍しくありません。

施工管理担当者は工期末の追い込みや変更対応のたびに残業を余儀なくされます。発注条件の非対称性が、現場レベルの長時間労働を構造的に生み出しています。

天候・受注波の季節変動による繁閑差

建設工事は屋外作業が多く、天候によって作業進捗が大きく左右されます。雨天や台風による遅延分は、晴天時の突貫作業で取り戻す必要があります。

受注量にも季節変動があり、年度末の3月や夏の繁忙期は受注が集中します。繁忙期と閑散期の落差が大きいほど、ピーク時の残業が膨らみます。

変動要因内容現場への影響
天候リスク雨天・台風による作業遅延晴天日の突貫作業・夜間作業が増加
年度末集中3月の竣工・検査集中工期末の一斉残業
夏の繁忙期公共工事・民間工事の重なり現場掛け持ちと長時間対応

多重下請け構造と職人の技能継承問題

多重下請け構造は、工期の短縮圧力を下層に集中させます。元請が圧縮した工期をそのまま一次下請に渡し、さらに二次・三次下請へと下りていくため、末端の職人に届く工期はすでに余裕のない状態です。

現場の職人不足を悪化させているのが、技能継承の断絶です。

  • 60歳以上の技能者が全体の約26%を占め、今後10年で大半が引退する見通し
  • 若い技能者の入職者数が長年にわたって減少傾向
  • 一人当たりの担当範囲が広がり、熟練職人に業務が集中

経験豊富な職人への業務集中が、長時間労働の固定化を招いています。

業界全体の残業実態:現場の39%が月45時間超の背景

2024年4月の上限規制適用後も、建設現場の約39%が月45時間を超える時間外労働の実態にあります。元請となる企業のゼネコン働き方改革が叫ばれる一方で、下請へのしわ寄せや現場実務の多忙さが解消されていないことが背景にあります。jinjer株式会社の調査では、施行前の月平均残業時間が45時間以上と回答した現場担当者が47%に上っており、規制後も高止まりが続いています。

日本建設業連合会の2022年度調査でも、月45時間・年360時間の原則上限を超えた技術者が59.1%に達していました。発注条件・天候リスク・人手不足という三重の構造問題が解消されない限り、罰則付き規制が施行された現在でも残業の削減は容易ではありません。

移動時間・待機時間・準備時間は労働時間に含まれるか

建設業の現場では、朝の集合・移動・待機・片付けなど、実作業以外の時間が多く発生します。これらの時間が「労働時間」に該当するかどうかは、残業代計算や上限規制の適用に直接影響します。

通達と判例が示す「労働時間」の定義

労働基準法には「労働時間」の定義規定が存在しません。最高裁判所は三菱重工業長崎造船所事件(1997年)の判決で、「労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう」と明示しました。

労働契約や就業規則の定めではなく、実態で判断されます。厚生労働省の通達も同じ立場を取っており、「使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間は労働時間に当たる」としています。

現場間の移動時間:使用者の指揮命令下かどうかが判断基準

移動時間の労働時間該当性は、その移動が使用者の指揮命令下にあるかどうかで判断します。自宅から最初の現場への移動(通勤)は算入されませんが、会社の指示に基づく現場間移動は算入対象となります。

移動のパターン労働時間への算入
自宅から最初の現場への移動算入しない(通勤)
会社集合後、社用車で現場へ移動算入する
現場から現場への移動(会社指示)算入する
最後の現場から自宅への直帰算入しない(通勤)

東京地裁平成20年2月22日判決では、会社への朝6時50分の集合から始まる工程について、従業員は少なくとも集合時点から会社の指揮監督下にあると判断し、現場への移動時間を労働時間に含めました。会社の指示で車両・経路・出発時間が指定される直行直帰の場合も、実質的に指揮命令下にあるとして労働時間と認められた事例があります。

手待ち時間・準備・片付けの取り扱い

手待ち時間とは、実際に作業をしていなくても、使用者からの指示にいつでも対応できる状態で待機している時間のことです。業務命令による待機であれば、作業が発生していなくても労働時間として扱います。

建設現場でよくある場面を以下に整理します。

場面労働時間の該当
元請の指示を待って現場で待機該当する
材料搬入待ちで現場を離れられない該当する
作業服への着替え(会社が指示)該当する
工具の準備・後片付け(指示あり)該当する
昼休みに現場を自由に離れられる該当しない

準備・片付けについては、使用者が明示または黙示に指示している場合に労働時間となります。現場の安全上の理由などから当然に求められている行為も、黙示の指示と判断される場合があります。

労働時間の適正把握義務と記録方法

2019年4月の労働安全衛生法改正により、使用者は客観的な方法によって労働者の労働時間を把握する義務を負います。自己申告のみでは不十分とされ、改ざんが容易な方法は認められません。

厚生労働省のガイドラインが認める客観的記録の方法は次のとおりです。

  • タイムカード・ICカードによる入退場記録
  • PCのログイン・ログオフ記録
  • 入退室管理システムの記録
  • GPS端末による位置情報・移動記録(直行直帰・複数現場の場合に有効)

建設業は直行直帰や複数現場の掛け持ちが多く、事務所での記録だけでは実態を反映できないケースが多くあります。GPS端末やスマートフォンアプリを活用した現場単位での打刻管理が、2026年時点での実務的な対応として普及しています。

上限規制に違反した場合のリスクと現実的な対応策

上限規制への違反は、罰則だけでなく受注機会の喪失にも直結します。罰則の内容から36協定の正しい手順、ICTを活用した残業削減策まで順に解説します。

罰則の内容:6か月以下の懲役または30万円以下の罰金

時間外労働の上限規制に違反した場合、労働基準法第119条に基づき6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。違反した使用者(事業主または管理者)だけでなく、法人にも同額の罰金が課される両罰規定が適用されます。

公共工事を受注する建設会社にとって、送検・起訴は入札参加資格の審査に影響する可能性があります。金銭的な制裁よりも、受注機会の喪失という実害のほうが深刻です。

行政指導・是正勧告から送検に至るプロセス

違反が発覚しても、即座に送検されるわけではありません。実際には段階的なプロセスがあります。

ステップ内容
1. 監督調査労働基準監督署が定期または申告を受けて立入調査を実施
2. 行政指導是正が必要な点を文書で通知
3. 是正勧告改善期限を設定し、具体的な改善を求める
4. 書類送検改善が見られない場合、検察官に送致

悪質・繰り返しの違反と判断された場合は、企業名が公表されることもあります。早期の是正対応が、法的リスクを最小化する最善策です。

36協定の正しい締結と届出手順

36協定の締結・届出は、時間外労働を合法的に命じるための前提条件です。協定が未締結のまま残業を命じた場合、上限規制以前に労働基準法第32条違反となります。

締結・届出の主な手順は次のとおりです。

  1. 労働者の過半数代表者(または労働組合)を選出する
  2. 使用者と代表者が協定書に署名・押印する
  3. 所轄の労働基準監督署に届出書(様式第9号)を提出する
  4. 協定の内容を労働者に周知する

建設業向けの届出様式は4種類あります。月45時間・年360時間の限度時間を超えるかどうか、災害時の復旧・復興業務が含まれるかどうかで選択が変わります。

「業務の都合上必要であったため」のような抽象的な記載は認められず、残業が発生する理由を具体的に記述することが求められます。電子申請はe-Govから行えます。

工程管理の見直しとICT活用で残業を削減する具体策

残業の根本原因は工程のしわ寄せと間接業務の非効率にあります。ICTツールの導入により、この両方に同時にアプローチできます。

工程管理の見直しでは、月次計画を週単位に分解し、作業量と人員のバランスを可視化することが出発点です。遅れを早期に発見できれば、無理な追い込みを避けられます。

課題ICTによる解決策
書類作成・承認の手間施工管理アプリで写真・書類を一元管理
現場確認のための移動遠隔臨場・クラウドカメラで移動時間を削減
設計変更の反映遅れBIMで変更を即時共有し手戻りを防止
検査・承認の待ち時間電子書類化とe-Gov申請で対面手続きを削減

施工管理アプリを導入した現場では、書類作成時間が週単位で削減されたという報告があります。残業削減は「頑張り方を変える」のではなく、「仕組みを変える」ことで実現します。

まとめ:建設業の時間外労働規制を正しく理解して自社の対応を整える

本記事では、建設業の時間外労働に適用される上限規制の内容を、原則上限・特別条項・罰則・移動時間の扱いという4つの観点から解説しました。2024年4月の適用開始から2年以上が経過した現在、規制の理解不足による違反リスクは見過ごせない段階に入っています。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • 原則上限は月45時間・年360時間、特別条項締結時でも年720時間が上限
  • 移動時間・手待ち時間は使用者の指揮命令下にあれば労働時間に該当
  • 違反時は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金、行政指導から送検も

本記事を読み終えた方は、建設業の時間外労働に関する規制の全体像を把握し、自社の36協定や工程管理の見直しに向けた判断材料を手に入れられたはずです。

自社の現場状況を踏まえた具体的な対応方法を知りたい場合は、お気軽にお問い合わせください。ICT活用による工程改善の資料もご用意しています。

建設業の時間外労働に関するよくある質問

参考文献

  1. 建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制(厚生労働省)
  2. 建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています(厚生労働省 建設業従事者の長時間労働改善ポータルサイト)
  3. 建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A(厚生労働省)

執筆者

Construction DX 編集部
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