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直接労務費とは?間接労務費との違いと計算方法・仕訳を解説

制度・法対応

この記事のポイント

直接労務費とは、特定の工事や製品の製造に直接従事する作業員に支払う賃金のことで、賃率×作業時間で計算する。間接労務費や加工費との違いを理解することが、正確な原価計算につながる。

直接労務費とは?間接労務費との違いと計算方法・仕訳を解説

「直接労務費と間接労務費の違いがあいまいで、原価計算にどう反映すればよいか分からない」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • 直接労務費と間接労務費の違い
  • 直接労務費の計算方法
  • 直接労務費の仕訳・勘定科目

直接労務費とは特定の製品や工事に直接ひも付く労務費のことで、求め方と仕訳のルールを押さえれば原価計算に正しく反映できます。

配賦基準や加工費との関係まで理解すれば、工事原価や製品原価の精度も高められます。続きでは具体例や計算式もあわせて解説します。

直接労務費とは?間接労務費との違い

直接労務費は、特定の工事にどれだけ費用がかかったかを明確に把握できる労務費です。現場で交わされる工事請負契約書の印紙代などの経費と同様に、個々の工事原価を正確に算出するために欠かせない要素ですが、間接労務費や人件費と混同されがちです。

ここでは直接労務費の定義と、間接労務費・人件費との違いを整理します。

直接労務費の定義

直接労務費とは、特定の工事現場での作業に対して直接支払われる賃金のことです。 工事ごとの消費量がはっきり把握できる点が最大の特徴です。

対象になる主な費用は次のとおりです。

  • 工事現場の職人や作業員に支払う基本賃金
  • パート・アルバイトなど臨時雇用の技能者に支払う雑給
  • 現場作業に対する加給金(残業手当や特殊作業手当など)

直接労務費の求め方は、賃率と施工時間を使った次の計算式で表せます。

  • 賃率=直接工の賃金(基本賃金+加給金)÷総就業時間
  • 直接労務費=賃率×その工事の施工にかかった時間

例えば、賃率が時給3,000円の職人が、ある工事に80時間従事した場合、直接労務費は24万円になります。 このように施工時間と紐づけて計算できることが、直接労務費の実務上の強みです。

間接労務費との違い

間接労務費とは、特定の工事に直接ひもづけられない労務関連の費用です。そもそも労務費とは建設業において「直接労務費」と「間接労務費」に大別され、現場で働く人にかかる費用でも、どの工事にいくら使ったかを個別に切り分けられないものが間接労務費に該当します。

具体的には、賞与、退職給付金、法定福利費、有給休暇手当、休業手当、育児休業手当などが間接労務費に含まれます。 これらは簿記上、工事間接費として処理されます。

直接労務費と間接労務費の違いをわかりやすく整理すると、次のようになります。

項目直接労務費間接労務費
工事との対応関係特定の工事に直接ひもづく複数工事に共通してかかる
主な内容現場作業員の基本賃金、雑給賞与、法定福利費、有給手当など
見積書上の分類直接工事費一般管理費、現場管理費など
計算方法賃率×施工時間労務費総額-直接労務費

間接労務費は、労務費全体から直接労務費を差し引くことで求められます。 現場監督や事務所スタッフの給与も、特定の工事に直接対応しない場合は間接労務費として扱われます。

直接労務費と人件費の違い

直接労務費と人件費は、集計の目的が異なる費用です。 人件費は会社に所属する全従業員の給与や手当を含む、企業全体の費用区分になります。

一方、直接労務費は製品やサービスの製造に直接関連する費用として、製造原価に計上されるものです。これは注文書や請書の建設業向けテンプレートなどを用いて内訳を明示する際にも、労務費として個別に算出・記載される重要な項目です。つまり直接労務費は、人件費という大きな枠の中で、特定の工事の施工に直接使われた分だけを切り出した費用といえます。

会計上の扱いにも違いがあります。

  1. 人件費は販管費や売上原価として損益計算書に計上される
  2. 直接労務費は工事原価の一部として、直接工事費に含まれる
  3. 直接労務費は施工時間との対応関係が明確である点が、他の人件費と区別される

このように、直接労務費・間接労務費・人件費はそれぞれ集計の単位と目的が異なります。 工事原価を正確に把握するには、この三者の違いを理解したうえで区分することが欠かせません。

直接労務費に含まれる項目の具体例

直接労務費に含まれるのは、直接工が製品や工事の直接作業に費やした時間に対応する賃金です。基本給だけでなく一部の手当も対象になるため、範囲を勘違いしやすい費目です。

ここでは直接工の賃金・手当の内訳、直接労務費に含まれないもの、実際の金額例の3点を順に整理します。

直接工に支払う賃金・手当

直接工とは、製品の加工や組立、工事の施工など、生産活動に直接携わる作業員を指します。たとえば解体工事の契約書に基づいて現場で作業する職人も直接工に該当し、直接労務費の対象になるのはこれら直接工が直接作業に従事した時間分の賃金です。

含まれる代表的な項目は次のとおりです。

  • 基本賃金(月給・日給・時給などの本給)
  • 超過勤務手当(残業代・深夜勤務手当・休日勤務手当)
  • 危険作業手当
  • 能率手当・精皆勤手当などの加給金
  • 直接作業時間分の雑給(パート・臨時工の賃金)

ポイントは、同じ直接工の賃金であっても、直接作業時間分だけが直接労務費になる点です。同じ人物でも、清掃や運搬待ちなど間接作業に従事した時間の賃金は間接労務費に振り替えます。

直接労務費に含まれないもの

直接労務費と間接労務費の違いは、金額の大小ではなく作業内容と手当の性質にあります。生活保障的な性格を持つ手当や、直接作業以外の時間に対する賃金は、直接工の分であっても間接労務費として扱います。

含まれないものと含まれるものの違いを表に整理します。

区分直接労務費間接労務費
賃金の性質直接作業時間分の基本給・加給金間接作業時間分の賃金、生活関連手当
代表的な手当残業代、危険作業手当、能率手当通勤手当、住宅手当、家族手当
対象者の例施工中の職人、組立工現場監督、事務員、待機時間中の職人
会計上の扱い工事原価・製造原価に直課間接費として配賦

通勤手当や住宅手当、家族手当は、労働の対価というより生活保障の意味合いが強い手当です。そのため直接工に支給されていても、直接労務費ではなく間接労務費に分類します。

また、現場監督や事務スタッフなど、直接作業を行わない従業員の給与も直接労務費には含まれません。これらはすべて間接労務費として、現場管理費や一般管理費に計上します。

直接労務費の具体例

直接労務費は「賃率×直接作業時間」で求めるのが基本の考え方です。実際の現場でどう積み上がるのか、簡単な例で確認します。

例えば、時給2500円の職人が1日8時間のうち7時間を直接作業、1時間を清掃などの間接作業に充てたとします。

  • 直接労務費:2500円×7時間=17500円
  • 間接労務費:2500円×1時間=2500円

この日に2時間の残業が発生し、割増賃金として1時間あたり3125円が加算された場合、残業分の7500円も直接作業に対応する分であれば直接労務費に含めます。一方で、同じ職人にその日1000円の通勤手当が支給されていても、これは間接労務費として別に集計します。

このように直接労務費は、誰が受け取ったかではなく、どの作業時間に対応する賃金かで判断します。仕訳や原価計算を行う際は、まず作業日報などで直接作業時間と間接作業時間を分け、それぞれの賃率を掛けて算出する流れが基本です。

直接労務費の計算方法

直接労務費は、賃率と直接作業時間を掛け合わせて求めます。 計算式自体はシンプルですが、賃率の設定や作業時間の集計方法を誤ると、工事原価が実態からずれてしまいます。

ここでは賃率の求め方、計算式、計算時の注意点を順番に解説します。

賃率の求め方

賃率とは、直接工が1時間働いたときにかかる労務費の単価です。 賃率は次の式で求められます。

  • 賃率 = 直接工の賃金 ÷ 直接作業の総時間

たとえば、ある職人の月給が40万円で、その月の直接作業時間が160時間だった場合、賃率は2,500円になります。 賃率には大きく分けて2つの考え方があります。

賃率の種類内容特徴
実際賃率実際に支払った賃金と実際の作業時間から算出正確だが計算が完了後になる
予定賃率過去の実績や見積もりから事前に設定早く原価を把握できるが差異が出る

建設業では、職種によって単価が異なるため、職種ごとに賃率を分けて管理するのが一般的です。 現場監督より鉄筋工や型枠大工の賃率が高くなるケースもあり、一律の賃率で計算すると誤差が大きくなります。

直接労務費の計算式

直接労務費の基本計算式は次のとおりです。

  • 直接労務費 = 賃率 × 直接作業時間

この式に沿って、実際の工事を例に計算してみます。 賃率が2,500円の職人が、ある工事に80時間従事したとします。

このとき直接労務費は、2,500円×80時間で20万円と求められます。

複数の職種が関わる工事では、職種ごとに計算して合算します。

  1. 職種ごとに賃率を確定する
  2. 職種ごとの直接作業時間を集計する
  3. 賃率×作業時間を職種ごとに計算する
  4. すべての職種の金額を合計する

この積み上げ方式により、工種や工程別の原価を正確に把握できます。

計算時に注意すべきポイント

計算式は単純ですが、実務では次のような点でつまずきやすいです。

  • 直接作業時間と間接作業時間の切り分け
  • 給与の締め日と原価の締め日のずれ
  • 予定賃率と実際賃率の差異の扱い

まず、移動時間や待機時間、資材の運搬時間は間接労務費に含まれるため、直接作業時間と混同しないようにします。 この切り分けがあいまいだと、直接労務費が実態より大きく計上されてしまいます。

次に、給与の締め日と工事原価の締め日がずれている会社は少なくありません。 その場合、当月支払った給与から前月分を差し引き、当月分を加えるといった調整を行い、実際の稼働月に合わせて労務費を反映させます。

さらに、予定賃率を使って先に原価を見積もった場合、工事完了後に実際賃率との差額である賃率差異を確認します。 差異が大きい場合は、次回以降の予定賃率の見直しにつなげることが重要です。

これらの点を押さえておくことで、直接労務費の求め方の精度が高まり、正確な工事原価の把握につながります。

直接労務費の仕訳と勘定科目

直接労務費は工事原価の一部として、決まった勘定科目とルールで仕訳します。 仕訳を誤ると完成工事原価報告書の数字がずれてしまいます。

ここでは実務で使う勘定科目、具体的な仕訳例、間接労務費との違いを順に整理します。

直接労務費に使う勘定科目

建設業で直接労務費を計上するときは、未成工事支出金という勘定科目を使います。 これは製造業でいう仕掛品にあたり、工事が完成するまでの費用を一時的にためておく資産科目です。

現場作業員に賃金を支払ったときは、未成工事支出金の労務費区分に金額を集計します。 工事が完成して引き渡した段階で、未成工事支出金から完成工事原価へ振り替えます。

英語表記ではdirect labor costと呼ばれます。 海外案件の資料や外資系ソフトを使う場面で目にする表現です。

勘定科目役割使うタイミング
未成工事支出金工事完成前の費用を集計する資産科目労務費が発生したとき
完成工事原価完成した工事の原価を計上する費用科目工事を引き渡したとき
工事未払金・未払費用未払いの賃金や外注労務費を計上する負債科目支払いが翌月以降になるとき

直接労務費と直接経費をあわせて加工費と呼ぶことがあります。 材料費以外にかかった製造コストをまとめて把握するための区分です。

加工費という勘定科目自体は存在しません。 仕訳ではあくまで未成工事支出金の中で、労務費と経費を分けて記録します。

直接労務費の仕訳例

直接労務費の仕訳は、支払いのタイミングによって次の3パターンに分かれます。

  1. 現金で賃金を支払った場合 借方に未成工事支出金(労務費)500,000円、貸方に現金500,000円を計上します。
  2. 給与計算期間と原価計算期間がずれ、未払いが発生した場合 借方に未成工事支出金(労務費)300,000円、貸方に未払費用300,000円を計上します。 翌月に支払ったときは、借方に未払費用300,000円、貸方に現金300,000円を計上します。
  3. 工事が完成し、原価へ振り替える場合 借方に完成工事原価(労務費)5,000,000円、貸方に未成工事支出金5,000,000円を計上します。

未払いが生じるケースでは、当月の実際の作業時間に対応する金額を未払計上することがポイントです。 これを怠ると、原価計算期間と実態がずれ、月次の工事原価が正しく把握できなくなります。

間接労務費との仕訳の違い

直接労務費は特定の工事に紐づくため、発生した時点で未成工事支出金へ直接計上します。 一方、間接労務費は現場監督や事務員など複数の工事にまたがる人件費のため、いったん経費として計上してから各工事へ配賦します。

区分対象仕訳の流れ
直接労務費現場で作業する職人の賃金未成工事支出金(労務費)へ直接計上する
間接労務費現場監督や事務員など複数工事にまたがる人件費経費として計上したあと、工事ごとに配賦して未成工事支出金へ振り替える

直接費と間接費をわかりやすく言い換えると、特定の工事だけにかかる費用か、複数の工事に共通してかかる費用かの違いです。 この基準で見ると、直接労務費と間接労務費の区別もわかりやすくなります。

仕訳の担当者は、賃金台帳や作業日報をもとにどちらの区分にあたるかを都度判断する必要があります。 判断を誤ると配賦計算のやり直しが発生し、経理業務の負担が増えてしまいます。

まとめ:直接労務費を正しく理解して原価計算に活かそう

ここまで、直接労務費の定義や間接労務費との違い、含まれる項目の具体例、計算方法、仕訳の処理方法を解説してきました。直接労務費は工事原価を正しく把握するうえで欠かせない要素であり、求め方や仕訳のルールを押さえることで日々の原価計算がスムーズになります。加工費との関係や直接費と間接費の違いを理解しておくと、現場ごとの収支もより明確に見えてきます。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • 直接労務費は特定の工事に直接紐づく人件費で、間接労務費とは区別して管理する
  • 作業時間や労務単価をもとに求め方を押さえれば、正確な計算がしやすくなる
  • 仕訳や勘定科目のルールを理解すると、原価管理の精度が高まる

直接労務費の考え方を身につければ、労務費計算の迷いが減り、工事ごとの原価を根拠を持って説明できるようになります。間接労務費との違いや加工費とのつながりも整理できているので、原価計算全体の見通しが立てやすくなったはずです。日々の記帳や原価管理の場面で、今回の内容をぜひ役立ててください。

直接労務費の管理体制づくりや原価計算の仕組みづくりでお悩みの際は、お気軽にお問い合わせください。より詳しい資料もご用意していますので、あわせてご活用いただけます。

直接労務費に関するよくある質問

参考文献

  1. 原価計算基準|会計基準検索システム(企業会計基準委員会)
  2. 労務費に関する基準ポータルサイト(国土交通省)

執筆者

Construction DX 編集部
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