建設業許可 実務経験証明書の書き方・3年5年10年の記入例解説
この記事のポイント
建設業許可の専任技術者(営業所技術者等)の要件を実務経験で証明する様式第九号は、使用者(雇用主)が証明者となって作成する書類で、現行様式に押印欄はない。必要年数は指定学科の大学卒3年・高校卒5年・学歴や資格がない場合10年。確認資料は申請先で異なり、東京都は許可のない期間について請求書等を原則1か月1件求める。会社が解散した場合は当時の取締役や本人による証明と閉鎖登記簿謄本で対応する。
「建設業許可の申請で実務経験証明書が必要なんだけど、どうやって書けばいいの?以前勤めていた会社が廃業していて証明を取れるかどうかも不安だし、10年分の工事をどう整理すればいいのかもわからない…」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 実務経験証明書の書き方と記入例を3年・5年・10年のパターン別に解説
- 審査を通過するための確認資料の揃え方と都道府県別の違い
- 前職会社が廃業・倒産していて証明書を取得できない場合の対処法
建設業許可の申請における実務経験証明書とは、専任技術者の要件を実務経験で満たすことを証明する書類で、様式第九号を使って申請者または雇用主が作成します。書き方のルールや記入例を正しく理解すれば、自分で準備を進めることができます。
前職の会社が廃業・倒産していて協力が得にくいケースや、確認資料が手元に揃っていないケースでも、対処できる方法があります。本記事では書き方の基本から資料の揃え方、困ったときの対応策まで順を追って解説しますので、ぜひ最後まで読み進めてください。
実務経験証明書(様式第九号)とは
実務経験証明書(様式第九号)は、建設業許可を取得するメリットを享受するための申請において、専任技術者の要件を実務経験によって証明するために使用する公式書類です。建設業法施行規則に定められた様式で、都道府県や国土交通省への申請時に提出が求められます。
国家資格や指定学科の卒業資格を持つ技術者であれば、資格証の写しで専任技術者要件を満たせます。そのような資格・学歴がない場合は、一定年数の実務経験を証明しなければなりません。
その際に使うのがこの様式第九号です。なお、経営業務管理責任者の経験を証明する書類(様式第七号)とは別の書類ですので、混同しないよう注意が必要です。
令和6年12月13日以降に提出する様式や現行の建設業許可事務ガイドラインでは、専任技術者は「営業所技術者等」(一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者)と表記されています。本記事では、従来の呼び名に合わせて専任技術者と書きます。
実務経験証明書が必要になる場面
様式第九号を提出するのは、主に次の場面です。
- 建設業許可の新規申請で、専任技術者が国家資格を持たず実務経験で要件を満たす場合
- 業種追加・変更申請で、追加業種の専任技術者を実務経験によって証明する場合
- 許可換えや般・特新規申請において、専任技術者の要件確認が改めて必要な場合
注意点として、建設業許可における欠格要件の一覧に該当せず、国家資格(施工管理技士・建築士等)や大臣特認で専任技術者要件を満たす場合は、様式第九号の提出は不要です。あくまでも「資格・学歴がない場合の代替証明手段」として位置づけられています。
また、経営業務管理責任者(経管)の経験証明に使う様式第七号とは目的が異なります。経管は経営者としての管理経験を証明するものですが、様式第九号は技術者としての施工現場での実務経験を証明するものです。
両者は要件も記載内容も別物であるため、申請書類を準備する際には区別して扱う必要があります。
証明できる実務経験の種類と条件
様式第九号で証明できるのは、申請する建設業の種類(業種)に対応した建設工事に関する実務経験です。具体的には次のような業務が対象になります。
| 対象となる実務 | 対象外となる業務 |
|---|---|
| 施工管理・現場監督業務 | 単純な雑用・力仕事 |
| 技術上の指導・監督 | 事務・経理・営業業務 |
| 実際の施工作業(技術を要するもの) | 資材の運搬のみ |
| 設計・積算(建設工事に関わるもの) | 他業種の工事作業 |
重要なのは、「申請業種に係る建設工事の実務経験」であることであり、もし許可を得ないまま営業を行うと、建設業許可なしバレる経路と罰則のリスクに直面することになります。たとえば塗装工事業の許可を申請する場合、大工工事や設備工事の実務経験は原則として認められません。
国土交通省の建設業許可事務ガイドラインは、実務の経験を「建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験」と定義しています。設計技術者として設計に従事した経験や現場監督技術者として監督に従事した経験のほか、土工やその見習いとして従事した経験も含まれ、建設工事の雑務だけを行っていた期間は含まれません。
同一期間中に複数の業種を並行して経験した場合も、ガイドラインは経験期間が重複するものを原則として二重に計算しないとしています。東京都の手引(令和8年度)も、実務経験で2業種を申請する場合は業種ごとに原則10年以上、合わせて20年以上が必要としています。
業種によっては、次のように算入できる経験が限られます。
| 工事の種類 | ガイドラインでの取り扱い |
|---|---|
| 電気工事・消防施設工事 | 電気工事士免状や消防設備士免状などの交付を受けた者でなければ直接従事できない工事は、免状などの交付を受けた者として従事した経験だけを算入する |
| 解体工事 | 平成28年5月31日までにとび・土工工事業の許可業者として請け負った解体工事の経験も算入でき、この期間はとび・土工工事業と解体工事業の双方に計上できる。建設リサイクル法の施行後は軽微な工事でも解体工事業の登録が必要なため、審査で確認される |
なお、経験の証明は実務経験を積んだ事業所の代表者(雇用主)が証明者となるのが原則です。在籍中の会社が証明してくれない、あるいは廃業している場合など、証明者を確保できないケースでは別途確認資料の準備が必要になる場合があります。
実務経験年数の計算方法
実務経験年数は、従事した期間を月単位で積み上げて計算します。必要な年数は申請者の学歴・資格によって異なりますが、もし許可を保有する事業者が何らかの事情で事業をたたむ場合は、建設業許可の廃業届の手続きが必要になります。
| 区分 | 必要な実務経験年数 |
|---|---|
| 大学・高等専門学校の指定学科卒業 | 卒業後3年以上 |
| 専修学校の指定学科卒業(専門士・高度専門士) | 卒業後3年以上 |
| 高校・中等教育学校の指定学科卒業 | 卒業後5年以上 |
| 専修学校の指定学科卒業(上記以外) | 卒業後5年以上 |
| 1級技術検定の第一次検定または第二次検定に合格 | 合格後3年以上(指定建設業7業種と電気通信工事業を除く) |
| 2級技術検定の第一次検定または第二次検定に合格 | 合格後5年以上(指定建設業7業種と電気通信工事業を除く) |
| 学歴・資格なし(実務経験のみ) | 10年以上 |
上の表は関東地方整備局の建設業許可申請・変更の手引き(令和7年12月更新)によります。技術検定の合格による短縮は、令和5年7月1日施行の建設業法施行規則改正で加わったものです。指定建設業とは、土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種を指します。
月単位での計算例を挙げると、2016年4月から2026年3月までの就労期間は120ヶ月(10年)となります。2016年4月から2021年9月であれば66ヶ月(5年6ヶ月)です。
月の途中から開始・終了した期間の取り扱いは申請先によって異なるため、運用ルールを事前に確認することが重要です。たとえば東京都の手引(令和8年度)は、月の途中からの在籍や月の途中までの在籍を1か月分とは数えないとしています。
また、同一期間中に複数の業種の工事を並行して行っていた場合、その期間を複数業種に重複計上することは原則として認められません。複数業種を経験している場合は、各業種ごとに期間を按分するか、主たる業種のみに充当する形をとる必要があります。
様式第九号には、職名、実務経験の内容(従事した主な工事名など)、実務経験年数(年月から年月まで)を記載します。所定の用紙に書ききれないときは、用紙を追加して必要な実務経験年数に達するまで記載します。
実務経験証明書の書き方と記入例
実務経験証明書(様式第九号)は、適正な手続きにより建設業許可の取り消しを防ぐ対策としても機能する、専任技術者の実務経験を証明するための書類です。証明者(雇用主)と被証明者(技術者本人)の情報、実際に従事した工事の詳細、経験年数の集計という3つのブロックで構成されています。
記入内容は裏付け資料(請求書・工事台帳など)と一致させることが審査通過の鍵です。
上部(証明者・被証明者)の書き方
上部には「証明者」と「被証明者」のそれぞれの情報を記入しますが、これは新規申請だけでなく、後日行うことになる建設業許可における業種追加手続きでも同様の記入が求められます。証明者(雇用主・事業主)欄には以下を記入します。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 冒頭の工事の種類 | 許可を受けようとする建設業に対応する工事の種類(造園工事など)を1つ |
| 証明者 | 被証明者を雇用していた法人の代表者または個人事業主の所在地・商号・氏名 |
| 被証明者との関係 | 証明者からみた被証明者との関係(役員、社員、従業員など) |
被証明者(技術者本人)については、次の項目を記入します。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 技術者の氏名・生年月日 | 証明を受ける技術者本人の氏名と生年月日 |
| 使用者の商号又は名称 | 実務経験を積んだ会社の商号。個人事業の場合は事業主の氏名(屋号を登記している場合は屋号) |
| 使用された期間 | 実際に雇用されていた期間を年月で記入する。実務経験期間の合計ではない |
上の2つの表は、国土交通省が公開している様式第九号と記載要領と、東京都の手引(令和8年度)の記入例をもとに整理したものです。現行の様式第九号に押印欄はありません。令和3年1月1日の建設業法施行規則等の改正で、申請書類への押印が見直されたためです。
前職での証明の場合は、元勤務先の代表者に証明を依頼する必要があります。使用者の証明を得られないときは、様式下部の「使用者の証明を得ることができない場合はその理由」欄に理由を書きます。ガイドラインは、法人が解散している場合などには被証明者と同等以上の役職にあった者を証明者にできるとしています。
中段(職名・実務経験の内容・実務経験年数)の書き方
中段は実際に従事した建設工事の実績を記入するブロックであり、ここで証明された現場実績は、建設業許可証掲示義務緩和国土交通省の改正内容の恩恵を受ける下請業者の技術者証明などにも関わってきます。所定の用紙に書ききれないときは、用紙を追加して必要な実務経験年数に達するまで記載します。
各行に記入する項目は、様式の記載要領で次のように定められています。
| 欄 | 記載要領・ガイドラインの定め | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 職名 | 被証明者が所属していた部課名等を記載する | 東京都の記入例では工事主任、工事係長、工事課長 |
| 実務経験の内容 | 従事した主な工事名等を具体的に記載する | ガイドラインの例は「都市計画街路○○線改良工事現場主任」「○○駅ビル増改築工事現場監督」 |
| 実務経験年数 | 左の工事に係る経験期間を年月から年月までで記載する | 平成16年1月から平成16年12月まで |
| 合計 | 実務経験年数の合計を満○年○月で記載する | 満10年0月 |
東京都の手引(令和8年度)の記入例は、原則として1年を1行にまとめ、その期の代表的な工事名に「他○件」を添える書き方です(例:砧公園植栽工事 他25件)。実務経験10年で申請する場合は10行以上を記入し、ある1年の実務経験が12か月に満たないときは、証明する年数を増やして十分な期間を記入します。
記入順は時系列順(古い順)が推奨されます。記入した工事名や期間は、裏付け資料と突合できるようにしておきます。東京都の手引は、建設業許可を受けていた期間は決算報告の工事経歴書と、許可を受けていなかった期間は請求書などと内容が合うように求めています。
審査では資料との突合が行われるため、資料が存在しない工事を記入することは避けてください。
記載要領では、この証明書は建設工事の種類ごとに、被証明者1人について、証明者別に作成するとされています。複数業種の実務経験を証明する場合は、業種ごとに別々の用紙を作成します。
下段(実務経験年数の集計)の書き方
下段は中段に記入した各工事の実務経験年数を月単位で集計し、合計の実務経験年数を算出するブロックです。集計のポイントは以下の通りです。
- 各行の実務経験年数を「〇年〇ヶ月」または月数に換算して合計する
- 月の端数は切り捨てが基本(都道府県により異なる場合あり)
- 1件の工事が複数月にわたる場合は、実際の従事月数をそのまま計上する
- 同一期間に複数の工事に従事した場合、重複した期間は二重に数えない
ガイドラインは、経験期間が重複しているものは原則として二重に計算しないとしています。ここで正確に実務経験年数を証明し技術者登録を行っておくことは、将来的に建設業での公共工事の入札に参加する際にも極めて重要となります。たとえば東京都の手引(令和8年度)は、許可のない期間を請求書などで証明する場合、原則として1か月1件で1か月分の経験と数えるとしています。
詳細は各都道府県の建設業許可申請手引きを必ず参照してください。最終的な合計年数の欄に「〇年〇ヶ月」と記入し、必要年数(3年・5年・10年)を満たしていることを確認します。
3年・5年・10年別の記載パターン
専任技術者に必要な実務経験年数は、学歴・保有資格や申請する建設業許可の種類と選び方によって異なります。記載するページ数や期間の長さが変わるため、自分がどのパターンに該当するかを最初に確認してください。
| パターン | 対象者 | 必要実務経験年数 | あわせて提出する書類 |
|---|---|---|---|
| 3年パターン | 指定学科の大学・高専卒業者 | 3年以上 | 卒業証明書(原本) |
| 5年パターン | 指定学科の高校・中等教育学校卒業者 | 5年以上 | 卒業証明書(原本) |
| 10年パターン | 無資格・非指定学科卒業者 | 10年以上 | なし(実務経験証明書と確認資料のみ) |
「指定学科」とは、申請する業種に対応する土木工学・建築学・電気工学・機械工学などの学科を指します。関東地方整備局の手引きでは、指定学科であることが確認できる卒業証明書の原本を添付し(写しや学位記は不可)、別途、成績証明書の写しを求める場合があるとされています。
証明書は証明者別に作成するため、複数の会社で経験を積んだ場合は会社ごとに証明書を作成し、合計年数が必要年数を満たすよう組み合わせます。東京都の記入例のように1年を1行にまとめる書き方であれば、10年パターンでも10行以上の記入が目安です。
学歴証明ができず、技術検定の合格による短縮にも当たらない場合は、10年パターンでの証明が必要です。
審査で通るための確認資料の揃え方
建設業許可の申請で実務経験を証明するには、実務経験証明書の記載内容を裏付ける「確認資料」を一緒に提出する必要があります。確認資料が不足していたり、内容に矛盾があったりすると審査が通らないため、特定建設業の財産的要件など他の厳しい基準と同様に、書類の揃え方を事前に把握しておくことが重要です。
注文書・請求書をセットで用意する理由
実務経験証明書には工事名・工事期間・発注者名などを記載しますが、これらの情報を裏付けるために確認資料が必要です。一般的に求められる書類の組み合わせは以下のとおりです。
| 書類の種類 | 証明できる内容 |
|---|---|
| 注文書(注文請書) | 発注者から受注した事実・工事名・発注者名 |
| 請求書 | 工事代金を請求した実績・請負金額 |
| 通帳・入金記録 | 代金の受領による工事の完了実績 |
注文書だけでは「実際に工事代金が発生したか」が分かりません。一方、請求書だけでは「誰から受注したどの工事か」が分かりにくくなります。
注文書と請求書をセットで揃えることで、工事の受注から完了までの一連の流れを書面で示すことができ、これは建設業許可で求められる500万円の自己資金を証明するプロセスと並んで実務上の重要なハードルとなります。
なお、都道府県によっては請求書のみ、または振込記録のみで認める場合もありますが、原則としてセットで用意しておくほうが審査をスムーズに進められます。請求書には必ず工事名・工事期間・請求金額を記載し、実務経験証明書の記載と一致していることを確認してください。
都道府県別の主な提出書類の違い
建設業許可の申請は、国土交通大臣許可(地方整備局)か知事許可か、またどの都道府県かによって審査基準の運用が異なり、認める確認資料の範囲も違います。主な申請先の扱いは以下のとおりです。
- 国土交通大臣許可(関東地方整備局):証明者が許可を受けていた期間は、経験期間分の建設業許可通知書の写しで確認します。許可のない期間は、業種内容のわかる工事請負契約書または注文書・請書のセットが経験期間分必要で、セットでないものは認められません。あわせて、厚生年金被保険者記録照会回答票か所属企業の雇用証明書で、証明期間の常勤性を確認します(令和7年12月更新の手引き)。
- 東京都:証明者が許可を受けていた期間は建設業許可通知書などで確認し、東京都知事許可であれば様式第九号の空欄に許可番号・許可業種・許可期間を書くことで省略できます。許可のなかった期間は、業種が明確にわかる工事請負契約書・注文書・請求書などの写しを期間通年分そろえ、請求書や押印のない注文書には通帳の写しなどの入金確認資料を添えます。請求書は原則1か月1件で1か月分と数え、経営経験・実務経験期間確認表を提出すれば、間隔が3か月未満の請求書は省略できます(令和8年度の手引)。
- 大阪府:実務経験証明書には各年の代表的な工事を記載し、そのすべてについて確認書類を提示します。各年の代表的な工事と翌年の代表的な工事の間隔が1年以上空かないようにし、空いた場合はその間の工事実績も確認されます(令和8年3月改訂版の手引き)。
- 神奈川県:注文書・請書のセット、または工事請負契約書が基本です。独自の申請手引きを公表しており、認める書類の種類が細かく規定されています。
- 愛知県:注文書・請書のセットを基本としつつ、工事の規模や発注者の種別によって必要書類が変わる場合があります。
都道府県ごとに最新の申請手引きが改訂されることがあるため、申請先の建設業許可担当窓口のホームページで必ず最新版を確認してください。窓口への事前相談も有効です。
資料が不足している場合の対処法
過去の工事書類が紛失・廃棄されている場合や、当時の雇用先が廃業している場合でも、代替手段を組み合わせることで実務経験を証明できる可能性があります。
主な代替手段は以下のとおりです。
- 取引先への協力依頼:当時の発注者・元請会社に連絡して注文書や請求書の写しを提供してもらえるか確認します。取引先が書類を保管していれば入手できる場合があります。
- 金融機関の振込記録・通帳コピー:通帳の入金記録が代替資料として認められる都道府県があります。振込人名と金額が確認できる状態で準備します。
- 税務申告控え・確定申告書:確定申告書や青色申告決算書を補助資料として提出できる場合があります。ただし単体での証明は難しく、他の資料と組み合わせて使います。
- 一部資料しか残っていない場合:全期間分が揃わないときは、残っている資料で証明できる期間のみを実務経験として申請します。資料の有無を年ごとに整理してから申請を検討してください。
- 雇用先が廃業している場合:許可行政庁(都道府県の建設業課)に情報開示請求を行うことで、廃業した会社の許可情報を確認できる場合があります。在籍期間は、厚生年金の被保険者記録照会回答票(関東地方整備局や大阪府の手引きに記載)などで示します。東京都は健康保険証の写しを証明期間の常勤を示す資料として認めていないため、使える資料は申請先の手引きで確認してください。
書類の過不足や代替手段に迷う場合は、申請窓口への事前相談や行政書士への依頼を早めに検討することをおすすめします。
前職会社に証明書を書いてもらえない場合の対応
建設業許可の実務経験証明書は、原則として実務経験を積んだ会社(前職の雇用先)が証明者になります。しかし、退職時の関係悪化や前職会社の廃業・倒産などにより、証明書を作成してもらえないケースは決して珍しくありません。
そのような場合でも、代替手段を適切に活用することで実務経験を証明できる可能性があります。以下では、状況別の対処法を解説します。
証明者についての公的な取り扱いは次のとおりです。ガイドラインは、証明者を原則として使用者(法人は代表者、個人は本人)としたうえで、法人が解散している場合などは被証明者と同等以上の役職にあった者を証明者にできるとし、その理由を様式に記載させるとしています。関東地方整備局の手引きは、実務経験証明書の自己証明を認めず、会社が解散した場合に限って当時の取締役または本人による証明を認め、閉鎖登記簿謄本の添付を求めています。東京都の手引も、破産などで証明を受けられない場合は、当時の取締役または技術者本人による証明が可能としています。
許可行政庁への問い合わせ・情報開示請求
前職会社が建設業許可を取得していた場合、許可の申請書類の中に専任技術者届や主任技術者として登録した記録が残っている可能性があります。この記録を活用する方法として、許可行政庁(都道府県の建設業課や地方整備局)への問い合わせ・情報開示請求があります。
情報公開法や各都道府県の情報公開条例に基づいて請求を行うと、当時の許可申請書の写しや専任技術者届の写しが開示される場合があります。開示内容のイメージは以下のとおりです。
| 開示される可能性がある書類 | 証明に役立つ内容 |
|---|---|
| 建設業許可申請書(写し) | 会社の業種・許可期間 |
| 専任技術者届(写し) | 在籍者として登録された記録 |
| 変更届(退任・就任の届) | 在籍期間の裏付け |
ただし、開示される情報の範囲は機関によって異なります。「在籍の事実が分かる記録があるか」を事前に電話で確認してから請求手続きを進めると、無駄な時間を省けます。
開示された書類はあくまで補助資料として扱われることが多く、他の証拠と組み合わせて使うのが一般的です。
取引先や金融機関への協力依頼
前職会社が現存していても証明を拒否されている場合や、廃業後に別の当事者から証拠を集めたい場合は、当時の取引先(発注者・元請会社)や金融機関に協力を求める方法があります。
取引先に依頼する際は、以下の書類を中心に提供を求めます。
- 工事発注書や注文書の写し(発注者から受注した事実を示す)
- 工事請負契約書の写し(契約当事者として前職会社が記載されているもの)
- 支払明細や振込記録(工事代金の授受を示す)
金融機関の通帳コピーや振込記録が実務実績の補助資料として認められる都道府県もあります。ただし、認められる書類の種類と範囲は申請先によって異なるため、事前に許可行政庁の窓口に確認することが必要です。
取引先に依頼する際は、相手方の業務負担を考慮し、依頼内容を具体的に伝えると協力を得やすくなります。
廃業・倒産した会社の実務経験を証明する手順
前職会社が廃業または倒産している場合は、その会社から証明をもらうことができません。この場合は、複数の書類を組み合わせて在籍の事実・雇用の実態・従事した工事の内容を間接的に証明することになります。
おおまかな手順は次のとおりです。
- 会社の閉鎖登記簿謄本を法務局で取得し、前職会社が実在したこと・業種・閉鎖年月日を確認する。
- ハローワークに「雇用保険被保険者記録照会」を申請し、当該会社での雇用保険加入期間を取得する。在籍期間の証明として有力な資料になります。
- 日本年金機構またはねんきんネットで「被保険者記録照会回答票」を取得し、社会保険の加入記録から在籍期間を補完する。
- 源泉徴収票・給与明細・健康保険被保険者証の写しなど、雇用実態を示す書類を可能な限り収集する。
- 上記の書類を許可行政庁に持参または送付し、これらの資料で実務経験として認められるかを事前に相談する。
廃業・倒産した会社の実務経験証明は、認める書類の組み合わせや審査の柔軟性が都道府県ごとに大きく異なります。独力での対応が難しい場合は、建設業許可を専門とする行政書士に早めに相談することをおすすめします。
専門家が保有する各都道府県の最新運用情報を活かすことで、証明書の収集と申請を効率よく進めることができます。
まとめ:建設業許可の実務経験証明書を正しく準備するために
本記事では、建設業許可 実務経験証明書の書き方・記入例から、審査に必要な確認資料の揃え方、前職会社に証明書を作成してもらえない場合の対処法まで解説しました。学歴や資格によって必要な実務経験年数が異なる点や、都道府県ごとに審査基準が異なる点も、申請前に必ず確認しておきましょう。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 実務経験証明書は行政機関ではなく雇用主(使用者)が証明者となって作成する書類
- 学歴・資格により必要年数が異なる(大卒3年・高卒5年・無資格10年)
- 前職会社が解散している場合は当時の取締役や本人による証明と閉鎖登記簿謄本で対応する(申請先に要確認)
本記事を参考に申請書類の準備を進め、不明点がある場合は専門の行政書士への相談もご検討ください。
建設業許可 実務経験証明書によくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Construction DX 編集部は、建設DX・建設テック・業界動向に関するニュースや解説記事を制作する編集チームです。最新の技術・市場・制度・導入事例をわかりやすく整理し、建設業界のDX推進に役立つ情報を中立的な視点で発信しています。
監修者
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